全国フードバンク推進協議会のウェブサイト
「大きな課題としては、寄付する企業の免責ですね。提供品による食中毒などのリスクを懸念して二の足を踏む企業は少なくありません。米国では、ビル・エマーソン食料寄付法というものがあって、故意または重大な過失がない限り、食料を寄付した企業が責任と問われることはありません。日本でも同様の制度が必要でしょう」(米山さん)
食品ロス削減推進法が施行されたことを受け、日本政府は今年3月中に基本方針をまとめるとしている。その基本方針の中にも、企業の免責について調査・報告を行うことが含まれるのだという。廃棄される食品自体を減らすための業界の取り組みも重要だ。
農水省資料よりその2
「いわゆる、『3分の1ルール』という納品期限についての慣習があります。例えば、賞味期間が6か月の商品だと、卸業者は賞味期間の『3分の1』にあたる2か月以内にスーパーなどの小売店に納品しなければいけません。2か月より納品が遅れた商品は店頭に並ばず、メーカーに返品されたり廃棄されたりしてしまいます」(米山さん)
世界では8億人以上が飢餓状態、約13億トンが食品ロス
農水省資料よりその3
食品ロス削減推進法では、「事業者の責務」として、食品ロス削減に取り組むことが明記されている。農水省の発表によれば、2019年10月の時点で、総合スーパー11社、食品スーパー60社、コンビニ8社が納品期限の緩和もしくは予定しているとのこと。
貧困世帯の支援のみならず、温暖化による異常気象が頻発する中で、被災者支援としても、フードバンクの重要性は増してきている。
「2019年秋の台風被害でも、私達は現地のフードバンク団体と連携して、長野県や宮城県、埼玉県の被災地に食料を届けました。日頃の連携があるので、スムーズに支援物資を送ることができます」(米山さん)
食品ロスを大幅削減することは国連のSDGs(持続可能な開発目標)でも掲げられている目標でもある。WFPの統計によれば、8億人以上の人々が飢餓状態にあり、また食料のために自然環境が破壊され、生物多様性が脅かされている中で、世界の年間食料生産量の3分の1にあたる約13億トンが食品ロスとなってしまっている(国連食糧農業機関等の統計)。
こうした食品ロス・廃棄は、生産から加工、輸送、そしてごみ処理の過程で、膨大なCO2を排出する。その量は、年間で世界全体の排出量の8%と、日本の国としての排出量の全体の2倍以上という多さなのだ。
餓えている人々がいるのに食べ物を無駄にし、地球環境にも悪影響を与えるような馬鹿げたことは、何としても止めなくてはいけないだろう。一般の市民も余計な食品を買いすぎない、家庭や外食で食べ残しをしない、フードバンクに寄付するなど、食品ロス・廃棄や、子どもの貧困をなくす取り組みに協力していきたいものだ。
<文/志葉玲>