また、「
宅ふぁいる便を装うフィッシング等の偽装メールにご注意ください」という項目が追加された。この時点で、そうした犯罪者が暗躍していたのかは分からない。しかし、480万件の漏洩が確認され、その周知によりデータが使えなくなる可能性が高まった。それならば短期決戦で金を得ようとする犯罪者が出てきてもおかしくはない。漏洩対象者の中には、怪しいメールを受け取った人もいたかもしれない。
翌2019年1月29日には、「
「宅ふぁいる便」お客さま情報の漏洩に関するフリーダイヤル開設のご案内」が公開された。ページには「退会のお申し込み・パスワードのご確認・宅ふぁいる便ポイント交換のみ、以下のURLよりご利用いただけます。」というリンクがある。会社側でも、再開は正直に言って無理だろうという思いがあったのではないか。
この時期には既に、個人情報が平文で流出してしまったということが、各所で取り上げられている(参照:
Yahoo!ニュース、
zakzak)。ネットでも大きな話題になっていた(
Togetter)。これだけの大きな失敗をしてしまったあとでは、挽回は難しいと考えるのが普通だろう。
2019年3月14日には、
詳報が公開された。また2019年4月8日には、『
「宅ふぁいる便Web特設サイト」開設のご案内』が掲載された。
そして2020年1月14日に「宅ふぁいる便」サービス終了のお知らせがトップページに掲載された。情報漏洩から約1年。内部でどのような話し合いが続けられたかは分からない。しかし胃の痛むような撤退戦だったのではないかと思う。
「大きなファイルを送れる」という時代から、「安全にファイルを共有できる」という時代への変化。上手く舵を切れなかったのか、コストを先送りしてしまったのかは分からない。求められるサービスや、セキュリティの要求水準は時代によって変わる。上手く対応できなかったのだろうと感想を持った。
「宅ふぁいる便」がサービス停止して以降、代替サービス探しが色々とおこなわれた。いや、その時点で既に他のサービスへの移行が進んでいたのだが、それが加速したと言うべきだろう。漏洩前後から、様々なサービスが使われたり提案されたりしていた。そうしたサービスについて触れておこう。
「
GigaFile(ギガファイル)便」は、「宅ふぁいる便」によく似たサービスだ。実際、「宅ふぁいる便」停止直後に「それでは、GigaFile便で……」というやり取りが多かった。サイトは少しごちゃごちゃしているが、「宅ふぁいる便」の類似サービスを探している場合には選択肢となる。
ただ、最近『
ギガファイル便、「ファイル取り扱いの規約なし」と炎上 運営元は「技術者のみの会社で、手が回っていなかった」と謝罪 – ITmedia NEWS』という件もあった。この手のサービスは、ある程度のリスクは考えておいた方がよいのだろう。
データのやり取りに関しては、現在はオンラインストレージ系サービスの利用が主流だろう。この手のサービスの先駆けとなった「
Dropbox」。Google が運営する「
Google ドライブ」、Microsoft が運営する「
OneDrive」。また「
Box」も人気がある。最近も「Box でデータのやり取りを……」という案件があった。
仕事のファイル共有という点では「
GitHub」が指定されることもある。細かなファイルを頻繁にやり取りする場合は、差分が詳細に分かる GitHub が便利なことも多い。
オンラインを通して、ファイルをやり取りできるサービスは多くある。時代に合わせた便利なサービスを利用していくとよいだろう。
<文/柳井政和>