映画『前田建設ファンタジー営業部』が面白すぎる「3つ」の理由!『マジンガーZ』に真剣に取り組む実話だった!

(c)前田建設/Team F (c)ダイナミック企画・東映アニメーション

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 1月31日より映画『前田建設ファンタジー営業部』が公開されている。「よくわからない変なタイトル」(失礼で申し訳ない)と思われるかもしれないが、これがもう文句なしに面白い!誰にでもオススメできる、痛快無比な娯楽作だったのだ。その魅力を以下にお伝えしよう。

理由1:『マジンガーZ』の地下格納庫を建設せよ! 全ての働く人を鼓舞する物語!

 まず、『前田建設ファンタジー営業部』のあらすじを簡単に紹介しよう。建設工業会社の広報部で働く若手社員のドイ(高杉真宙)は、グループリーダーのハセガワ(小木博明)から「うちの技術でアニメの『マジンガーZ』の地下格納庫を作れないだろうか?」という無茶ぶりにもほどがある提案を振られる。本当にその格納庫を作るわけがないのだが、“ファンタジー世界からの受注があった”という体裁のもと、個性豊かな社員がチームを組み、Webの広報企画としてプロジェクトはスタートした。
(c)前田建設/Team F (c)ダイナミック企画・東映アニメーション

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 もう聞くだけで「えっ?」と誰もが思ってしまいそうな設定だ。「マジンガーZの地下格納庫を現実に作れるのか?」という疑問に答えるため、大の大人が真剣にプロジェクトに取り組むのだ。しかも、“実際には作らない”のである。一応は広報の一環であるという免罪符(?)もあるが、「なんのためにそんなことをするの?」という疑問も当然生まれるだろう。  しかし、その「バカバカしい」「なんのために?」という感情こそが本作に重要だった。実際に、プロデュサーである佐治幸宏氏は、本作についてこう述べている。 「若い人が冷めているといわれる時代に、大の大人が“空想の世界をリアルに体現すること”に本気で夢中になっていくことの面白さ、『何をバカなことを』と思っていた人々が次第に巻き込まれていく様子、そしてそこにあふれる熱気を体感していただきたいです」  『前田建設ファンタジー営業部』は、まさにこの言葉通りの魅力に満ち満ちている。無茶ぶりを超えてもやは荒唐無稽なプロジェクトについて、当初はイヤイヤやらされていたチームメンバーが、いつしか情熱を燃やして取り組むことになり、会社内の土質担当者や機械グループの担当部長も巻き込み、はたまた社外からの協力も得ていくのだから。  さらに「物理的に実現可能か」についてもチームメンバーは綿密に吟味し、図面や積算(工事などの費用を見積もること)も徹底して行われる。その過程が、これ以上のないエンターテインメント性に満ちていたのだ。
(c)前田建設/Team F (c)ダイナミック企画・東映アニメーション

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 加えて、これは社会で働くすべての人、特に社会人になったばかりの若者を鼓舞している作品とも言える。人気俳優の高杉真宙演じる若手社員は、「社会人になったら粛々と生きていく」と達観していて、働くことそのものに冷めた態度でいたのだが、彼の意識も次第に情熱そのものへと変化していくのだから。  高杉真宙の他にも、上地雄輔、岸井ゆきの、本多力、町田啓太(劇団EXILE)、六角精児、小木博明(おぎやはぎ)など、豪華キャストが勢ぞろいしている。それぞれが「こういう人いるいる!」と思える、良い意味でデフォルメされた“会社に1人はいそうな人”を見事に演じており、観る人それぞれが自分に似たキャラクターを見つけて自己を投影でき、そして心から応援できるということも、本作の大きな魅力だ。

理由2:なんと“実話”の映画化! その理想的なアプローチとは?

 この映画の物語が、なんと“実話”から生まれているということも、特筆しなければならないだろう。  前田建設工業株式会社は、ダムやトンネルなど数々のビッグプロジェクトを手がけてきた実在の組織だ。さらに、劇中と同様の“前田建設ファンタジー営業部”の公式サイトも存在している。これは、有志のボランティアによる、本物の広報企画だったのだ。  こちらのサイトでは、ゲーム『グランツーリスモ4』のレーストラックの設計についての連載や、映画の撮影日誌も読むことができるので、合わせて読むとさらに楽しめるだろう。  このWeb向けコンテンツのシリーズはそれぞれ書籍化がされ、さらに舞台化も行われた。今回の映画の脚本は、その舞台版と同じく劇団ヨーロッパ企画の上田誠氏が手がけている。  上田誠氏によると、今回の映画版は「舞台をベースとしながら、ひときわ熱く大げさなストーリーに仕立て直した」とのこと。実話からだいぶ“盛って”いて、現実との乖離もあることに上田誠氏は少しおののいていたそうなのだが、一方で当時の“図面”や“数値”はそのまま映画で用いられているのだそうだ。
(c)前田建設/Team F (c)ダイナミック企画・東映アニメーション

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 さらに、撮影には実際の前田建設工業株式会社の広々としたオフィスが使われた。劇中の掘削真っ最中のトンネル現場も本物であり、キャストに配られた作業着も本物、さらに画面に映るモブも本物の社員なのだそうだ。  これは、実話の映画化として理想的とも言えるアプローチなのではないだろうか。エンターテインメントとして面白くするための誇張はあるが、実際にプロジェクトに携わった人々の“努力の結晶”である数値や図面は本物を使っている。さらに企業が全面バックアップを行い、本物の舞台(ロケ地)を利用し、しっかりとしたリアリティも担保されているのだから。  なお、上田誠氏が脚本を手がけた映画は、同じく舞台が原作の映画『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)の他、『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)や『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)というアニメ映画も高い評価を得ている。その論理的に構築された物語に触れれば、きっと今後もその脚本担当作品を追いかけたくなることは間違いないだろう。
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