伊方発電所でのインシデントは近年多いのではないか?
この列挙した6件の報告されたインシデントは、その背後に膨大なヒヤリ・ハット事故が存在すると考えられます。そのことを勘案しなくても4週間で6件、うち2件が重大インシデント、1件が重要なインシデント、1件が人身事故というのは、インシデントが多発する事業所であり、
状況は深刻であると考えるほかありません。
事業所の健全性を示す人身事故は、
過去1年だけで10名(熱中症など体調不良含む、内1名は事業所と無関係の体調不良なので実数9、うち骨折など手術などを要するけが人2)ですので、ゼロ災という視点からは事業所の規模からも多いと思われます*。また少なくとも9名は協力会社警備会社の社員で残り1名は不明です。筆者は、情報開示の透明性という点では評価しています。
〈*従業員数千人規模の三交代制化学コンビナートでもゼロ災は年単位で継続するため、人身事故では事業所は大事になる。一方、労災のペナルティから、労災隠しも日常的に様々な事業所で起こりえる〉
また、特重工事によって工事箇所が多い事を勘案しても2019年9月6日発生の鉄筋11本の20m落下*といった重要なインシデント(一般事業所では重大インシデントに相当)が発生しています。
〈*
伊方発電所における工事用の鉄筋落下2019/09/13四国電力〉
他にも工事現場の頻発常連インシデントであるからこそ起こしてはいけないクレーン付きトラックの転倒も2019年1月18日に発生しています*。
〈*
「クレーン付きトラック転倒」時の通報連絡遅れに対する社内処分と改善策について2019/01/18四国電力:通報遅れは重要なインシデントだが、クレーン付きトラック転倒も一般に頻発することであり、インシデントとしては重要である。大分県庁がこのインシデントの詳細な報告を公開している(
伊方発電所におけるクレーン付きトラックの転倒について2019/03 大分県庁)〉
転倒したクレーン付きトラック 写真は四国電力(出典:大分県庁)
背後の建屋は、個体放射性廃棄物貯蔵所
クレーン転倒場所(赤矢印) 2019/02/11撮影 牧田
もしもクレーンが転落していれば、重大な人身事故になるところであった
以上から、2019年を通してのインシデントの発生は、その質と量共に事業所の異常を示唆するのではという疑念を筆者は持ちましたが、統計処理をしたわけではありませんので、状況を注視することにしていました。
第15回定検期間中の二週間に集中して発生した3件の重大・重要インシデント
そういった中、伊方発電所では、第15回定検を始めましたが、1月7日から1月20日にかけて重大インシデントと重要なインシデントが3件相次いで発生しました。
これらは、
制御棒クラスタ制御装置(CRD)に関わる国内PWRとしてはたいへんに珍しいおそらく国内初の重大インシデント、
使用済燃料ピット内での移動中の燃料集合体の乗り上げと落下信号誤発報という重要なインシデント、そして
一時的な所内外部電源喪失という重大インシデントと続きました。
これらの重大インシデント、重要インシデントは、それぞれ別個の箇所で独立に生じたものです。
これらのインシデントは、第二世代原子炉の冗長性の中でインシデントは終息し、所内外に大きな影響を与えることはありませんでした。しかし、
通常からの著しい逸脱であることは明らかであって、個別に徹底分析することは必須です。これらから学ぶことはたいへんに多いです。今回は、これらのうち1月20日に生じた外部電源喪失重大インシデントについて概説します。