ペット高齢化によって需要増。動物義足職人が語る熱い思い

独立から1年は苦労続き

 こうした下積み期間を経た後、腰椎を長期固定できる動物用コルセットを開発。27歳のときに特許を取得、翌’08年に動物を専門とする義肢装具メーカー・東洋装具医療器具製作所を立ち上げた。 「最初は相手にしてもらえず、獣医師からは“絵空事でしょ”“かわいそう”といった冷ややかな声ばかり。“医学的根拠がなく、うさん臭い”と面と向かって言われたことも。こんな状況でしたから、依頼も月1件から2件で、月収は2万円前後。妻に頼る生活が1年ほど続きました。完全にヒモです」  そもそも義足や装具作りはどのような手順で行われているのか。 「まず、獣医師から聞いた診断や測定結果から義肢装具が作れるかを判断します。椎間板ヘルニアの補助器具や、脚のつけ根の関節を固定する装具のような、ある程度形が決まっているものであれば、この段階で製作に取りかかります」
動物義足職人

【意外と大変!義肢装具ができるまで】
①足の表面の形状を型取りしたギプスに、石膏を流し込んで作ったもの。「この石膏型をベースに装具を作製していきます」

動物義足職人

②リウマチ様関節炎を持つ犬の脚の型紙。「型紙は石膏で型を取った後で、直接動物を見た僕が引きます。1枚につき2時間くらいかかります」

動物義足職人

③完成間近の後ろ脚の義足。「地面に足をついたときの衝撃を吸収するようにゲル状のクッションを入れています。通気性がよく水に強い素材」

製作した義肢装具は2万匹分

 一方、複雑な骨折や隻脚の場合、飼い主の元を訪れるという。 「義肢装具に必要な診断を行います。病気やケガに至った経緯や状況、現時点の状態などを細かく確認します。そのうえで必要な採寸や型取りを行います」  今では、全国の動物病院や愛護団体などから寄せられる依頼は年3000件以上。これまで2万匹に及ぶペットの義肢装具を製作してきた。そのうち95%が犬で、「関節が柔軟な猫は滅多にケガをしない」という。また、今では9種類ほどの既製品があるが、基本はオーダー制で、価格は4万円から10万円。製作期間が1週間という手間を考えると、それほど高い印象は受けない。  しかし、島田さんは飼い主の思わぬ反応に直面することもあるという。
動物義足職人

前腕手根関節から断脚したラブラドール・レトリバーが義足をつけて歩けるように。「体重が分散するような設計になっています」

次のページ
ときに直面する覚悟なき飼い主と業界の闇
1
2
3
週刊SPA!2/4号(1/28発売)

表紙の人/ 広瀬アリス

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!