ニューオーリンズで、異常に早い時期に始まったインフルエンザ
実は、今シーズンは昨年の夏からルイジアナ州ニューオーリンズで流行が始まっていました。通常の流行は12月ごろから始まるため、異常に早い時期に始まったといえます。2019年7月31日から11月21日、ニューオーリンズの小児病院は、23人の入院患者のサンプルを含む1268の検査で、B型インフルエンザウイルスの感染を報告しました。この期間中、ルイジアナ州では、B型インフルエンザウイルスに感染した小児が1人死亡しました。
当局が198人の子供のサンプルでB型インフルエンザの遺伝子配列を調べると、ほぼすべてのサンプルが、今年のインフルエンザワクチンのビクトリア系統B型株のクレードが異なる、要するにわずかな抗原性の違いによって少し種類が違うものでした。ただし、CDCは「ワクチンはまだ有用。流行しているB型インフルエンザウイルスは、ワクチンのビクトリア系統株とは遺伝的に異なるが、この2つは似ている」と述べました。仮に不一致であったとしても、交差防御(似ている抗原にとっても効果があること)によって効果が得られることがあります。また、インフルエンザにかかったとしても、ワクチンは重症化を防ぎます。ちなみにB型ウイルスに対するインフルエンザワクチンの有効性は通常約60%です。
ベイラー医科大学ウイルス学者ペドロ・ピエドラ医師は「MedPage Today」に、「今年、B型インフルエンザが優勢になっただけでなく、早く流行しました。まれですが、毎年、インフルエンザは予想外なことが起こります」「ワクチンは完全に一致するわけではありませんが、予防策として最善の策です」「ほぼ毎年、ウイルスの1つが完全に一致するわけではありません」といいます。また、ピエドラ医師は、B型インフルエンザ今年優勢であった理由として、温度と湿度という環境と、免疫力のないコミュニティといういくつかの疫学的な理由を提示しています。
さて、デルーシアちゃんの両親は、「子供に予防接種を受けさせてください」「私は、一人でも子供が病気になることを防ぎたい」「あなたの子供がこのように苦しむのを見るのは酷すぎます」と前述のCNN対して呼びかけます。
東京都感染症予防センターによると、日本では2009年に新型インフルエンザと呼ばれて流行したウイルスで、2011年4月1日から季節性インフルエンザとして位置づけられているA(H1N1)pdm09が流行しています。今後B型が流行する可能性もありますし、別のA型の亜型に感染するリスクもあります。まだ予防接種を受けていない方、今からでも遅くないので早めに接種してください。
<文/大西睦子>
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。