食事や生活習慣の改善、病気に対する知恵と対応力さえあれば健康は維持できる!?

薬の効果と副作用は、表裏一体

エキナセア

エキナセア。アメリカ先住民が感染症、歯や喉の痛み、傷の治癒のために使っていた。ドイツをはじめとした欧米では人気の薬草で、免疫力を高め、風邪予防に使われる

 昨今は、多用されている薬の弊害が医学的、科学的、統計的にもわかってきた。例えば、今まで原因不明とされてきたパーキンソン病発症の原因が「抗生物質の多用」による可能性がある、とフィンランドの研究機関が発表した。  睡眠薬や抗不安剤は高齢者ほど処方されるケースが増えるが、それらを多用するほど転倒や骨折、認知症につながり、薬依存を起こしやすく、死亡リスクが上がるという研究報告も数多くある。  義理母もまさにその状態だった。認知症の進行を防ぐための処方薬を服用すると、足がもつれてフラフラと歩き、危なっかしい。それで薬の服用を止めたら改善した。薬の効果と副作用は、表裏一体なのだ。

世の中にはびこる「滅菌」「殺菌」「抗菌」の逆を行く

「農業者の健康寿命が長い」という早稲田大学の研究報告もある。農業者はそれ以外の人より、男性で8年・女性で2年長生きするという。現役引退年齢は男女ともに10年長く、入院件数が少ない。入院経験ゼロの人も珍しくなく、老衰で亡くなる“ピンピンコロリ”が多い。結果として、医療費は3割も少なくなっている。当人や家族の負担が少なくなるだけでなく、自治体や国の医療費減少にも貢献するわけだ。  さらに東北大学の研究では、日本食を多く摂っている人では認知症の発症が20%も少ないことが明らかになった。  ヒポクラテスは、以下のように語っている。 「食べ物について知らない人が、どうして病気について理解できようか」 「汝の食事を薬とし、汝の薬を食事とせよ」 「満腹が原因の病気は、空腹によって治る」 「月に一度断食すれば、病気にならない」 「人は自然から遠ざかると、病気に近づく」 「病気は人間が自らの力をもって自然に治すものであり、医者はこれを手助けするもの」 「人間は誰でも体の中に100人の名医を持っている」  俺は千葉県匝瑳市で10年前から米を作り野菜を育てている、にわか百姓だ。“堕農”だが、それでも食べ物の一部を自分で育てている。野菜をおすそわけされることも多く、たいていは土つきのままもらう。  旬の季節に採れるものはたくさん収穫されて余るので、近所や仲間で融通し合うわけだ。すると、野菜を買わなくなる。結果、季節外の野菜を食べなくなる。季節外の野菜を食べたいとも思わなくなる。季節の野菜で作った料理を食べていれば、そうそう病気にはならない。  野菜を栽培しても、お裾分けをもらうにしても、土に日々触れることになる。間違って土や微生物が口に入ることもある。いや、口に入ったっていいと思っている。微生物が入ることにより、腸内細菌の活動が活発になって免疫力が高まると思うからだ。  抗生物質が危ない理由は「腸内細菌を死滅させるから」というのは、さまざまな研究で常識になってきている。俺は、世の中にはびこる「滅菌」「殺菌」「抗菌」の逆を行っている。ほどよく汚く生きているのだ。微生物豊富な自作の発酵食品(味噌・醤油・梅干・漬物など)も毎日食べる。そのおかげで耐性ができたのか、病気や感染に強くなった。  自然に近づき、ほどよく汚く暮らす。季節の野菜を中心に、空腹になってからよく噛んで食べ、ときに断食する。病気や怪我はメッセージと受け止め、体の変化に合わせて自らをリフォームしていく。自らのレジリエンスで健康になり、薬も病院も遠い存在になる。何より、薬や病院に払うお金と費やす時間が減るのは嬉しいじゃないか。 【たまTSUKI物語 第23回】 <文・写真/髙坂勝>
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
1
2
3