学生大量行方不明事件の被害を訴えるデモ
Photo by Cristian Leyva/NurPhoto via Getty Images
14年間で6万人以上が行方不明になっているメキシコ
メキシコで2006年から現在まで、行方不明者の数は6万1637人と統計されている。これ程多くの行方不明者が出ているといってもメキシコが戦争下にあったわけではない。そうではないが、それは戦争に匹敵する戦いの結果である。戦いとは、メキシコで蔓延る麻薬組織カルテル同士による熾烈な戦いである。そしてその犠牲になった一般市民もこの行方不明者の中に加えられている。(参照:「
Infobae」)
一般市民の犠牲者の中、子供の数はなんと1万1072人。あまりに「日常茶飯事」となってしまった結果、警察の対応もぞんざいなものになっているという。例えば、ハリスコ州に住んでいたホンジュラス出身の母親アナ・エナモラドの子供、オスカル・アントニオが2010年1月19日に行方不明となった事件がある。昨年2月に警察から彼女の子供のことで連絡があった。彼女は早速指定された日に赴いた。彼女に渡されたのはビニール袋に入った火葬された灰であった。そして、警察の担当者はこう言い放った。
「これが貴方の息子さんのオスカル・アントニオ君です」
アナ・エナモラドは、あまりに冷淡な態度に驚きつつ、「私の息子の遺体を見たい」と主張した。しかし、警察側から返ってきたのは、「遺体はない。火葬してしまった。誰もそれをこれまで要求しなかった」という回答であったという。
アナ・エナモラドは、「誰も要求しなかったですって? 数千の家族が我々の子供の行方を捜し、また捜査願い出して来たというのに」と言って憤慨を表明。「火葬された灰」は受け取るのを拒んだ。というのも、DNAによる鑑定も実施されておらず、彼女の息子だという証拠がないからだ。(参照:「
BBC」)
行方不明者の捜査に協力しているアナ・カロリナ・チミアクによると、見つかった大半の遺体は鑑定もせずに火葬しているというのが現状なのだそうだ。刑事訴訟法に従えば、遺体の身元確認が行われた段階まで火葬は禁止されている。しかし、現状は遺体が見つかればすぐに火葬している。というのも、遺体が見つかったときの状態を考えると、すぐに火葬してやる方が品位を保てるという考えが関係当局の方であるからだという。
昨年だけでも主要5州で発見された死体を捨てて土を覆ただけの場所から800体以上の遺体が見つかっている。そのひとつひとつの遺体から身元を確認して行く作業には非常に困難を伴うということからすぐに火葬するということになるわけである。