粗製乱造されるインチキなセミナー講師を見分けるポイントとは?

テキストの内容をちゃんと理解していないビジネス研修講師

 自分たちの講座の中に表情分析の知見を取り入れたいので、「テキスト(教科書)を作成して欲しい」という依頼や「一緒にセミナーをしたい」という依頼を資格ビジネスの講師の方や会社や社団法人などの責任者の方から多々頂きます。そんなとき私が大切にしている視点は、科学という言葉をどう扱っているかということです。  具体的には、現在使用されているテキストをパラパラと見せて頂き、「テキストの中にある『科学的に証明されている』旨の記載ですが、この知見の一つ一つについて原典を確かめましたか。あるいは原著論文を読んで内容を深めていますか」と質問します。実は、この質問に対する答え、結構、「いいえ」がそこそこ多いのです。「テキストに書いてあることは正しい」こうした前提で普段、研修をされているようです。  もちろん、講師間の皆で共通して使用しているテキストにいちいち異議を唱えていたら、永遠にテキストが完成しない、あるいは永遠にテキストの内容を改定し続けなければならなくなります。  従って、極端にテキスト内容を疑えとは思いません。しかし、科学という言葉を使うならば、その内容の全て、と言いたいところですが、せめて半分くらいはしっかり原典で確認する、内容を深める、ときに近年発表された論文にあたり、古くなった内容は新しく妥当性の高い内容に差し替える、それくらいのことはして当然だと考えます。

一流の講師は自分でテキストを作成できる

 ある有名な心理学系の資格テキストの中に、1980年代に反駁され、妥当性がほとんどない内容が、いまだに掲載されているのを見たことがあります(右上を見上げたからウソをついているという「説」です。この「説」について知りたい方は過去記事を参照して下さい)。このテキストを作成した団体は結構大きいのですが、米国に本拠地を置くゆえ、日本人講師たちは物申せない立場なのでしょうか。  一流の講師は、自分で論文を読み、その妥当性を自分で判断し、自分で教科書を作成する能力があります。そうした講師の口から出て来る科学という言葉には重みがあります。科学知見を武器に講師業をされている方は、ここを目指すべきでしょう。  もし、セミナーや研修などで今回紹介した講師たちに出会ったら要注意です。「科学的・心理学的に正しい」という講師の言葉の適用範囲について、受講生の自らが思考し、その妥当性を考える必要があるでしょう。次回は、科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実<4>~経営者編~をお送り致します。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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