「好きを仕事に」する前に「やりたくない仕事」に直面したら人はどうすべきか?

コミュニケーション力を人事部門で活かす

山口氏

山口博氏

山口:「ここでも、映画プロデューサーとしての経験を、次のキャリアに活かしているのですね。逆にいえば、活かせるポジションでの転職を考えたということですね。しかし、現在は、同じバンダイナムコグループの人事部への異動は、さすがにキャリアを活かしづらかったのではないですか」 鈴木:「確かに人事部への異動は少し戸惑いもありました。転職後12年間、映画や女性向けキャラクターの商品化権を取得する業務に従事し、商品化権ビジネスの知識・経験とも自信がついてましたので、『このままキャリアを重ねよう!』という気持ちもありました。その反面、自身も40代半ばとなり、定年まで働くとしたらあと15年もあり、もうひとつ別のスキルやキャリアを身につけておかないと、と思う気持ちもあり今後のキャリアプランに悩んでいた時期でもありました。  当時、そんな私を人事部へ来ないかと声をかけてくれたGMからの言葉『社員を顧客と思って接し、社員からの信頼を勝ち取れるか、そこだから人事の業務の根幹は。あなたは仕事柄、各部署の社員と数多く接してきているし、持ち合わせているコミュニケーション力を活かせば充分に人事部で活躍できますよ!』が背中を押してくれました」 山口:「20代の読者の方々に、これだけは伝えたいということがありますか」 鈴木:「売り手市場だからといって自分が希望する会社・職種につける人は、実はごくわずかだと思います。私も大学卒業時は、希望かなわず、とりあえず大手企業に就職しておけば何とかなるだろう、『就職する=お金を稼ぐ』というくらいのモチベーションで社会人生活をスタートさせました。  その後転職し、運よく自分が一度はやってみたかった仕事(職種)に就くことができました。しかし、希望の仕事に就けた後でも、何度も自身のキャリアを見つめなおす機会が訪れたのです。その時々で判断をしなければいけない場面がきますが、『自身の内なる声』にその価値判断をゆだねていれば、おのずと答えは出るなぁ、と今思い返すとそう感じます。自分の気持ちと言いますか、働くモチベーションをどう保つか、これが重要だと思います」 山口:「なるほど」 鈴木:「働き方改革が世の中に浸透しつつあり、仕事に対する向き合い方、モチベーションの保ち方は人それぞれだと思います。だからこそ、自分の志向を知っておくことは大切なのはもちろん、出来る限り一緒に働く相手の志向も知っておくことが、部署やチームといった複数集団で仕事をしていく上で大切になってくるのだと思っています。私は幸い上司・同僚・前職の仲間たちに恵まれていたのかもしれませんが、まずは自分で自分の志向を知ったからこそ、周囲ともうまくやれていたのだとも思います」 <対談を終えて>  表面的には異なる業務も、実はその奥底に共通項があり、それを見極めることができれば、前のキャリアを後のキャリアに生かせるというモデルを、鈴木さんは示してくださったように思います。  それは、自身の内なる声に耳を傾けて生きてきた鈴木さんだからできてきたことだろうし、そのためにモチベーションファクターを見極めることが必要なのだと思います。(モチベーションファクター株式会社・山口 博) 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第170回】
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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