コロンビアでのデモに参加した先住民族の男性。
(Photo by Juan Carlos Torres/NurPhoto via Getty Images)
日本ではラテン・アメリカ諸国やスペイン語圏のニュースが圧倒的に少ない。その結果、外交の優先順位も低くなり、結果としてここ数年台頭しつつある中国に完全に水を開けられている。
当サイトでは、世界を多角的な視野で見るべく、日本では報じられることが少ないラテン・アメリカやスペインのニュース、あるいは、同じニュースでもスペイン語圏ではどう報じられているかといったことを知るために、スペイン在住の白石和幸氏に定期的に寄稿していただいている。
そんな白石氏に、2019年のラテン・アメリカやスペインに関するニュースをピックアップしてもらった。これらの動向は当然2020年も引き続きチェックしていくべきことだ。
◆1.ベネズエラから脱出した国民は500万人に到達する
2014年頃から始まったベネズエラ人の国外脱出は今年末には500万人に到達する。ベネズエラ人口の15%が国から脱出している計算だ。それは内戦によるものではない。独裁者による社会主義革命の失敗による食料難から始まって医薬品などあらゆるものが不足していることからだ。多くの医師も脱出している。職場も消滅。普通の生活ができなくなっているのだ。
ベネズエラからコロンビアに入国するのに一番利用度の高いベネズエラのサン・アントニオ市とコロンビアのククタ市に跨るシモン・ボリバル橋はベネズエラからの移民で溢れた橋に変身。毎日凡そ35000人のベネズエラ人がコロンビアに移民している。そこから一部は南米各国に移動し、コロンビアには現在250万人余りが滞留していると見られている。〈参照:「
Infobae」など〉
◆2.ベネズエラは企業の墓場だ
石油の埋蔵量では世界一を誇るベネズエラという国家は僅か20年で企業の墓場となった。チャベスとマドゥロの二人の独裁者による社会主義革命で資本主義に基づいた利潤を追求する企業は彼らによって否定されて国営化または廃業に追い込まれた。2008年に企業は80万社あった。それが2017年にはおよそ27万社が残っただけである。50万社が消滅したことになる。製造業は13万社あったのが、現在2600社が存続しているだけだという。〈参照:「
Infobae」など〉
トランプがいてもアメリカを目指さざるを得ない不法移民
◆3.中米からの北米に向けての不法集団移民(キャラバン)ブームは少し去っているが、不法移民は依然継続している
貧困、暴力、職場不足に苦しむ中米3か国グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの住民の北米に向けての集団移民キャラバンは少し減少したが、不法移民は今も続いている。少人数だと途中危険にさらされる機会も多い。1000人から3000人規模の集団での移動だと道中も比較的安全に移動できるというのがキャラバンを組む理由だ。しかし、最近はメキシコがトランプ政権の圧力によってメキシコ南部の国境の警備を強化している。それで中米からの不法移民者は大幅に減った。しかし、中米の人たちの生活苦は依然続いている。
アメリカ大陸における南北格差、そして不法移民送出国の中に存在する格差。搾取の構造を見直さないまま、国境に壁を作り、力で追い出すだけでは何も変わらない。〈参照:「
El Comercio」など〉
◆4.メキシコの麻薬組織による犯罪は今も増加している
メキシコの麻薬組織カルテルによる犯罪は増加の一途を辿っている。今年1月から11月までで最も殺害者の数が多かったのはグアナフアト州で3211人だ。メキシコ全国だと同期間に31688人が殺害されている。その中には警官も多くいる。昨年12月に大統領に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールはカルテルとの戦いに軍隊と警察を合わせたような国家防衛隊を編成し、彼らがカルテルに癒着しないように給料も上げた。しかし、その成果はまだ出ていない。〈参照:「
Infobae」など〉
◆5.ラテンアメリカで最大の経済大国ブラジルで極右の大統領が誕生
2019年1月、ブラジルで、「南米のトランプ」こと、ジャイル・ボルソナロが大統領に就任した。今年後半に入って経済に回復の兆しは見せているものの、彼の発言は常に攻撃的で、しかも差別主義者であることを如実に見せることが往々にしてある。その影響もあって彼の支持率は30%以下に落ち込んでいる。アルゼンチンで彼が支持していたマクリ前大統領が敗れて、左派系のアルベルト・フェルナンデスが当選したことから、彼の大統領の就任式には出席しなかった。ボルソナロは当初官僚を出席させると言っていた。しかし、ブラジルとアルゼンチンの双方の間での貿易取引はそれぞれ最大であることから、そのような無礼もできず、仕方なく副大統領を就任式に出席させた。〈参照:「
CNN Espanol」など〉