自治体直営の山村留学センター所長が入寮児童と保護者にレリハラ/不適切宗教勧誘か(後編)

善意の陰に潜む歪んだ思惑

 山口県岩国市が直営する『本郷山村留学センター』で起こった施設責任者による児童とその母親への“レリハラ(*立場を利用した宗教勧誘であるレリジャスハラスメント/religious harassmentのこと)”宗教勧誘事件。前編では、食い違う母親の告発内容と施設所長の弁明をお伝えした。  娘の継続入寮を望む母親に所長が示した天理高校への進学と母娘の天理教入信は、里親の交換条件だったのか。取材の過程では天理教が信者に推奨する「里子登録福祉活動」における里子への教化疑惑も浮上。岩国市、天理教本部、法律家、そして当事者への取材を経て見えてきたのは善意の陰に潜む歪んだ思惑だった。

市担当者「事実関係を確認しないとコメントできない」

 施設責任者による宗教勧誘や背景となった施設側の事情について、2019年12月16日、岩国市の担当部署へ問い合わせた。本郷山村留学センターを所管する岩国市教育政策課の三浦成寿課長は、寮の継続希望については施設上・人的・制度上の問題があるため女子中学生の受け入れを断っていると話す。 「センターは仕切りもない施設で男女の区別がない。思春期を迎える男女の中学生が共に暮らすには責任をもってお受けすることができない。一番最初の希望が男子生徒だった。以降ずっと男子で切り替えのタイミングがなかった。指導員も男性ばかりで女子中学生を泊める環境が整えられない」  女子中学生については里親制度での山村留学は可能であり受け入れてきたという。但し、前編で言及したように、これまでこの所長しか里親をしていない。 「市外から転校希望の方を小中学校に受け入れて、生活についてはセンターで行う形を取っている。山村留学事業自体は里親でもできるので、運用上、中学生の女子は里親、男子はセンターと区分けをして、夕食はセンター、朝食と寝るところだけ分けているのが里親とセンターの違い」  母親からの宗教勧誘被害の訴えについて三浦課長は当初、母親からの「天理高校への進学希望メール」を見たと発言。これは後ほど「10月23日に母親から留学センターへかかってきた電話の内容を所長がデータ化して市の担当職員に報告したものを読んだ」と訂正があった。 「進路についてお母さんから相談があって『天理高校とかそういう方向に進みたい』と先方から希望があったので、○○さん(所長)はたまたまそういう立場(天理教の教会長)におられるので『私が心配してあげてもいいけど』という形で話をしたことがあるようには聞いている。こちらからではなく向こうから」(岩国市教育政策課三浦課長)  しかし、母親は「その日の電話でそのような話は一切していない」と否定している。  センター内で所長が”交換条件”を持ちかけたことの問題性を指摘すると、三浦課長はこう疑念を呈した。 「事実であればそうなのかもしれないが、その辺の事実関係を私も確認してないので。流れとしては先方からそういう話があったので、所長も『この子もいい子なので、そういう方向に進んでいただければ自分も手助けできるな』と。それをこちらから主体的に進めるということはいくら何でもしていないと思う」  “いくら何でもしていないと思う”ことが行われたから問題となっているのだ    母親と所長の話の食い違いには明言を避けた。 「事実関係を確認しないとはっきり申し上げることはできない」  今後、自治体側はどのように今回の問題に向き合うのか。同課では12月中に事実関係の確認を行い、市としての正式なコメントを出せるのは年明けになるという。市の見解については後日、追記、もしくは続報する。
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母親の反論、市課長の回答について所長に再度問うと……
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