2019年の国内ニュースを振り返ると、世界各地に広がったデモが対岸の火事だとは到底思えない理由

③女性への性暴力

 警察や軍によるデモ参加者の女性に対する性暴力も各地で確認された。これも歴史が証明してきた通り、非常時には女性を始めとする弱者が被害者になるということが現代においても示された。 ◆動画:香港 ◆動画:チリ

権力にもみ消される被害者の声

 一方、2019年のジェンダーギャップ指数において過去最低の121位に沈んだ日本。  年明けの1月にNGT48 山口真帆さんへの暴行事件が明るみになり、3月のAKS記者会見では会見中にTwitterを通して反論するという手法とあわせて注目された。 〈参照:note「【信号無視話法】2019年3月22日 NGT48山口真帆さん暴行事件調査報告書 AKS記者会見」(2019年3月23日) 〉  また、12月に民事裁判の判決が出たばかりの伊藤詩織さんに対する性暴行事件。  こちらはBBCが一昨年から報じていることもあって、裁判結果はタイムズ、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNなどのメディアも大きく報じており、日本の性犯罪に対する司法の異常性がさらに世界的に認知された。 〈参照:「伊藤詩織氏が勝訴、強姦めぐる訴訟で元記者に賠償命令」BBC〉  この2つの事件は、被害者の訴えが権力者によって揉み消されようとしていた中、被害者が実名を出すリスクを背負って告発したことでようやく明るみになったという点で共通している。いかに日本が性暴力に対して声をあげにくい社会であるかが露呈されてしまった。平常時でもこのような状況であれば、今後、社会が不安定になった時に日本でどのような性暴力が起き、そして隠蔽されるのか想像しただけでも恐ろしい。  以上、3つの観点(警察の暴走、メディアの中立性への疑問、女性への性暴力)で2019年の日本のニュースを振り返ってきた。そもそも現在の日本では社会に混乱をきたすほどの大規模デモは起きていないが、今後、そのような状況になった場合、これら3つのリスクが海外よりもさらに深刻な形で顕在化する恐れがあるような気がしてならない。 <文/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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