桜を見る会問題、国会審議に占める割合はわずか。長引かせたのは誠実な回答から逃げ、嘘をつく政権与党

桜を見る会で挨拶する安倍晋三首相

時事通信社

「政策論争以外に多くの時間が割かれている」は本当か?

 今月13日、安倍首相が都内で講演を行い、「一昨年と昨年は、モリカケ問題。今年の春は、統計の問題。この秋は、桜を見る会。この3年ほどの間、国会では政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっていることを、国民の皆様に大変申し訳なく思っております」と発言した。  私はこの発言を聞き、「桜を見る会問題は、国会審議においてそこまで多くのウェイトを占めたのか?」と「そもそもこの問題を長引かせたのは自民党では?」という2点の疑問が浮かんだ。  そこで本記事では、(1)安倍首相の「政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっている」という話は事実か?、(2)そもそも桜を見る会問題を長引かせたのは誰か? について検証していく。  (1)を検証するために、第200回臨時国会の全審議を衆議院インターネット審議中継と参議院インターネット審議中継で確認することにした。  衆議院では、本会議と27種類の委員会・審査会(内閣委員会や外務・農林水産・経済産業連合審査会など)が開かれ、審議時間は合計で296時間41分だった。  審議内容も委員会ごとに様々で、例えば文部科学委員会では大学入試共通テスト、記述式問題について、法務委員会では入管収容施設における収容者へ対する人権侵害について話し合われていた。  参議院では、本会議と28種類の委員会・審査会・調査会(予算委員会や憲法審査会、資源エネルギーに関する調査会など)が開かれ、審議時間は合計で239時間。239時間のうち委員会ごとに様々なことが話し合われた。例えば農林水産委員会では肥料取締法の改正案について、国土交通委員会ではバス運転手の処遇改善などについてだ。  第200回臨時国会の合計審議時間は、衆議院の296時間41分と参議院の239時間を足した535時間41分だと分かった。

「桜を見る会」は全体の2.8%

 次に535時間41分のうち、何時間が桜を見る会に割かれたかを調べるために、国会会議録検索システムで、範囲を第200回臨時国会(10月4日~12月9日)、キーワードを『桜を見る会』にセットし検索した。  すると、衆参両院合わせて43件の本会議や委員会(財政金融委員会や法務委員会など)がヒットした。それらをインターネット審議中継で視聴し、桜を見る会に割かれた時間を1つ1つ計測したところ、本国会での桜を見る会について審議された合計時間は、15時間12分だったと分かった。  「桜を見る会の審議時間 15時間12分 ÷ 第200回臨時国会の合計審議時間535時間41分 × 100=2.8」となり、桜を見る会の審議時間は、全体のわずか2.8%であることが判明した。また本国会では、政府が提出した法案15本のうち、14本が成立している。  上記の事実から、安倍首相の「政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっている」という発言が全くのデタラメだと分かった。「野党が桜を見る会の話しかしないため、日本の政治が停滞している」というイメージを国民に植え、責任を野党に押し付けたい首相の魂胆が見え見えだ。  また、政権に不祥事が起こる度に「(不祥事)それ以外に、もっと重要な話し合うべきことがあるはずだ」と主張する政権応援団のコメンテーターや文筆家がいるが、今回の検証から彼らの主張は何ら裏付けもない詭弁で、彼らに言われなくても国会では様々な議題が話し合われていることが判明した。  「政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっている」という発言はフェイクだったが、桜を見る会問題が長引いたのは事実だ。そこで次に、2点目の「そもそも桜を見る会問題を長引かせたのは誰か?」について第200回国会を振り返って検証して行く。
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桜を見る会問題が長引いたのはなぜか
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