きな臭すぎる投資会社による「.org」ドメイン管理組織の買収。Mozillaなども抗議

買収したのは、ICANNの元最高経営責任者が関係する先

 実は、この2012年に、ファディ・チェアデという人が、ICANN の最高経営責任者になった。彼は任期が終了したあと、2016年に投資会社 Abry Partners に参加した。そして、Donuts という会社の買収を主導した。  Donuts という会社は、240以上のトップレベルドメインを持っている。その様子は、トップレベルドメイン一覧 – Wikipediaに、大量の「ドーナツ」という名前があることからも分かる。  この Donuts の共同設立者の1人である Jonathon Nevett が、2018年に PIR の CEO に就任した。その翌年の2019年に、前述の価格上限の撤廃を要請して認められる。  その裏で、 Ethos Capital という投資会社が2019年に設立される。CEO は、Abry Partners にいた Erik Brooks。Ethos Capital は、2019年11月の下旬に PIR を買収した。設立1年も経たずに買収したのだ。その目的で作られた会社と思っても、それほどおかしくはないだろう。値上げの準備は整っているから、あとは、Ethos Capital が「.org」の値段を上げるだけだ。  こうした背景があって、「.org」を利用している団体が、こぞって売却に反対する表明をおこなうことになった。そうした活動のひとつとして、Save.ORG というサイトが立ち上がり、署名を募っている。また、Firefox を開発している Mozilla公開質問状を提出している。  今回の売却価格は、1200億円超($1.135 billion)だったそうだ。上限撤廃された PIR の価値は、4400億円~6600億円($4~$6 billion)程度あるだろうとも言われている(GIGAZINE)。  この「.org」ドメインの売却について、ICANN は12月10日に30日間の保留をおこなうと発表している(ICANN)。  最終的にどうなるのか、現時点では分からない。ただ、多くの団体や組織が関わることなので、動向を見守っていきたいところだ。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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