麻生財務相の会見に見る「アップデートされない昭和親父」の悲哀

麻生太郎の敵は麻生太郎自身

 麻生氏がこれほどまでに新聞社を嫌う理由は、数多くの失言や漢字の読み間違えを新聞に取り上げられ、政治活動の足を引っ張られたと感じているからなのかもしれない。「メディアは私の敵だ」と。  しかし本当に、麻生氏の敵はメディアなのか?私は違うと考えている。麻生氏の過去の失言や振る舞いを振り返るに、麻生氏の本当の敵は、麻生氏自身だ。  麻生氏やその支持者は、自身の言動による炎上をメディアによる切り取りや印象操作だと思っているかもしれないが、炎上の原因は、麻生氏の価値観がアップデートされていないからだ。Windows 10の時代に、未だにアップデートせずWindows 1.0のまま発言しているので、長い歴史の積み重ねの上にある現代の価値観とは相いれず、多くの人から受け入れられないため炎上する。

ジェンダーに対する戦前のような価値観

 特に、価値観の未更新が1番顕著なのはジェンダーへ対する考え方だ。  初当選を果たした4年後の1983年2月9日、高知県議選の応援演説で麻生氏は「東京で美濃部革新都政が誕生したのは婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」と発言している。  麻生節でもリップサービスでもなく、明らかな性差別発言であり、麻生氏のジェンダーへ対する考え方が女性参政権のなかった戦前に近いものだと考えさせられる。   その後も、2014年12月7日の札幌での応援演説で「(社会保障費の増加について)高齢者が悪いというイメージをつくっている人が多いが、(女性が)子どもを産まないのが問題だ」と発言し批難を浴びた。「誤解を招いた」と釈明したが、2019年2月3日の福岡県での国政報告会で「(年を)取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違っている。子どもを産まなかった方が問題なんだ」と、5年前と同様の発言をし、再び批判を受けた。5年前に批判を浴び釈明したにもかかわらず、再び同じ発言をしている時点で、批判へ対する反省も価値観をアップデートしていこうとする気概も麻生氏からは一切感じられない。  そんな麻生氏と対照的に、社会は着実に変化し「女性の仕事は家事・育児・出産」という考えは薄れ、男女平等が根付いてきている。  また、ジェンダー平等だけでなく、パワハラを決して許さない社会も形成されつつあり、パワハラまがいの麻生氏の言動は多くの人に受け入れられないだろう。  麻生氏は、未更新の価値観のまま発言すると、自身の言動によって不特定多数の人を傷つける可能性があることを知るべきだ。そして周りの人たちは、数十年前までは「ジョーク」として一部ホモソーシャルな社会ではウケていたかもしれない麻生氏の発言を、今では誰も笑わないどころかドン引きされる可能性があることを教えるべきだ。  そしてもし今後、失言で非難を浴びることがあったら、今までのような形ばかりの釈明で終わらせるのではなく、なぜその発言が批判されるのかや、自身の価値観と社会の価値観のギャップを知り、それを埋める作業をしていただきたい。 <文/日下部智海>
1997年生まれ。明治大学法学部卒業。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。Twitter:@cshbkt
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