タイで日本人観光客の悪ふざけがテレビや新聞も報道する大騒動に発展

自由な雰囲気の南国でも知っておくべきこと

夜のタイのストリート

タイは街灯がオレンジの場所が多く、薄暗いし、淫靡な雰囲気に感じなくもない。かといって、悪ふざけでも性的な行動は控えたい

 ただ、この事件はタイ人の国民性を表しているともいえ、観光客や長期滞在者は憶えておいた方がいいことを象徴している。というのは、この報道が出た早い段階では警察に捜査をするべきとする声が多数だったからだ。  タイには昔から国際貿易国でもあったため、外国人や外国の文化が流入してきた。ところが、タイ人は保守的で、新しいものをあまり受け入れない一面も持ち合わせている。  たとえば、食に関しても、今でこそ国民食ともいえる米粉から作る麺「クイッティアオ」は、中国の広東省潮州県の麺類が発祥だとされる。タイのアユタヤ王朝時代(1351~1767年)には中国人の商人が持ち込んでいたとされるが、タイ人全般が受け入れるようになったのは第2次世界大戦中のことだ。  また、タイ国内には外国人向け性風俗店が数多にあるが、本来タイ人は人前で肌を露出することを極端に嫌がる。服装に関しても、近代は英国を中心に欧米の影響を受けていることもあって、身なりが調っていない人は低階級の人物とみなされてしまう。さらに、仏教徒が国民の94%とされ、敬虔な信者ばかりで非常にまじめな性格であるというのもあり、下品なことを嫌う。  これらのタイ人気質が「道路上で外国人が性交をするなんて、タイの品位を落としている!」と、今回の事件に対し、真相が判明する前に過剰反応させたのだ。こういうことは多々ある。たとえばビーチリゾートの砂浜で盛り上がってしまったカップルがその場で性交してしまうことがあり、警察が逮捕したというニュースはよく見かける。ちょっとした殺人事件ならほとんど報道されることはないにも関わらず、この手の事件に関してはニュースになってしまう。さすがに厳重注意や罰金刑などで済み、刑務所に入ることはないが。

「性」に関して日本人が問題を起こすことも

 日本人も性に関係した事件を起こしていて、タイの品位を傷つけたと批判されることがある。たとえば、アダルトビデオの業界においてニッチなジャンルではあるようだが、タイ人女優が出演するものがある。10年以上前にはタイのセクシー系タレントがこっそりと日本のAVに出演し、それがタイで発覚するやいなや、女優を騙した日本のAVが悪いといった意見が噴出した。数年前にはタイ女性の客室乗務員をナンパしたシナリオのため、タイの玄関・スワナプーム国際空港でオープニングの部分を少しだけ撮影してしまい、それにタイ側がかなり怒った。  微笑みの国と呼ばれるタイは、基本的におおらかになんでも許される部分は確かに多い。しかし、タイ人にも怒るポイントがあるので、今回の若者たちは本当に性交渉をしていたわけではないとはいえ、そう周囲に勘違いさせることはタイでは許されることではなく、分別のある行動を取らなければならないという教訓になった。一般的な観光客も羽目を外してしまうこともある。タイはそうしても許されそうな雰囲気はあるが、やっていいこと・悪いことがあるのだ。 <取材・文・写真/高田胤臣>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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