――「種をまく人」は自主映画ですね。自主映画には助成金の存在が不可欠と言われていますが、相次いで不交付や取り消しの決定などのニュースが入って来ています。
竹内:今年に入って減額された助成金もありますし、海外への出品支援の額も大幅に削られ、支援する映画祭が指定されました。これでは日本映画は衰退してしまうのではないかと。
やはり、国家による映画への支援はフランスの形が理想だと思います。映画の入場チケットに税金をかけて、その税収を映画制作会社の制作部門へ配分する。今のままでは制作会社もリスクを負うことになるので、商業映画に比べ制作費の回収が難しいと言われている社会的なテーマを扱う作品が作れないし、映画の多様性を保つことはできないのではないかと思います。
――ギリシャのテッサロニキ国際映画祭で2つの賞を受賞していますが、他の映画祭でも上映され賞を受賞していますね。海外での反応はいかがでしたか?
竹内:キリスト教が根付いていることもあって、光雄はキリストそのものだという声が多かったです。日本よりも海外の観客の方が制作意図を読み取ってくれるのかもしれないですね。俳優の演技は世界各地で絶賛されました。テッサロニキ映画祭の審査委員長だったアミール・ナデリ監督が「自分にすべての権限があったら役者全員に賞をあげたかった。特に母親役の葉子が素晴らしかった」とのことでした。
――これからの作品作りについてお聞かせください。
竹内:日本は少子化が進み、労働力を外国の方々に頼らざるを得ない社会になりつつありますが、異質なものを受け容れない風潮のままでは、もはや社会が立ち行かないのではないかと感じています。
情報が取得しやすいからこそ、自分と異質なものとそうでないものを決めがちなところもあります。今回は「障害」がテーマでしたが、これからも「正常」と「異常」の境目にある表現を掘り下げて、生きていることとは何なのかを考え続けて作品を作っていきたいです。
<取材・文/熊野雅恵>
くまのまさえ ライター、クリエイターズサポート行政書士法務事務所・代表行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、自主映画の宣伝や書籍の企画にも関わる。