とはいえ、この極右ポピュリズム政党が現在支持率において11月28日の時点でトップの32.7%をマークしているのである。それに右派2党フォルツァ・イタリアとイタリア同胞の支持率を合わす49.2%となって確実に政権に就くことができる。(参照:「
Panorama」)
それを裏付けるように現在の
五つ星運動と民主党の連立政権は不安定でいつ連立を解消しても不思議ではないという地点にまで至っている。
特に、五つ星運動の議員が同盟に議員が移籍する動きを見せている。既に
五つ星運動の4人の上院議員が同盟に移籍することが確実となっている。
イタリアでは議員が政党を変えるというのは上着を着替えるのと同じで日常茶飯事のことだ。最近18か月で80人の議員が別の政党に移籍している。前回の総選挙が実施された2018年3月から今年7月までに政党移動は28件あったそうだ。一度に複数の議員が別の政党に移籍するといった具合である。
マテオ・レンツィが新党イタリア・ビバを創設した際には民主党から40人余りの議員がこの新党に移籍している。その中には現政権の二人の閣僚も含まれている。五つ星運動からイタリア・ビバに移籍したジェルソミナ・ビノは「五つ星運動は民主政治がどのようなものか理解していない。政治は政党を強固なものにするのではなく、民衆に回答を提供するために政治をするのだ」と述べて、政党が弱体化して民衆が望んでいるものを提供できなくなるとその政党に籍を置き続けることは意味がないということを示唆したのである。
ベルルスコニー元首相の政党、フォルツァ・イタリアから民主党に移籍したベアトゥリゼ・ロレンツィンは8回も政党を変えている。彼女は「唯一バカだけが一つの政党にとどまっているだけだ」と語って、政党を変えるのは当たり前のことという考えなのである。(参照:「
Publico」)
このように政党を変えることが容易なイタリア議会だ。10年目の節目を迎える五つ星運動は2年前の選挙で32%の支持票を獲得して同盟との連立政権に就いたのであるが、現在はその支持率は16%まで下降している。容易に政党を変えることのできるイアリア議会では凋落している政党に残る意味はないわけだ。
だから、同党の議員の動きも活発で、同盟と民主党に議員の移籍がこれから更に増える様相にある。しかし、五つ星運動自体は、反体制派として特権階級に甘んじている政治家どもに反対して誕生した政党だ。そのルーツに戻るべきだという意見の議員もいる。ということで五つ星運動は次期選挙までに3つのグループに分裂して政権に就くのは二度とないであろう。そして国民から支持を集めている同盟を中心に右派政権が遅くとも2年後には誕生する可能性が高まっている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身