急増する[動物ふれあいカフェ]の闇。癒やされるのは人間だけで動物には負担

野生と違う環境で心身を病むカワウソも

動物カフェ

狭いケージに閉じ込められているカワウソ。本来の食べ物である生魚を与えると糞が臭くなりお金もかかるので、普段はキャットフードを与えられているという

 最近のブームで、カワウソカフェも急増中。カワウソカフェ元店員のCさんはこう告発する。 「触れ合うことができるのは一部のカワウソだけで、お客さんを噛んでしまう『問題児』も多いんです。そうした子たちは狭いケージに入れられたまま、外に出してはもらえません。中には寄声を発したり、尻尾を噛んだり、同じ場所をグルグル回り続けるなどの『常同行動』を起こしたりする子もいます。そうなると、お客さんには見えないバックヤードに連れていかれて、そこで“飼い殺し”です」  Cさんの店には、行政の動物愛護相談センターから「カワウソが泳げる水場が必要」との指導が入ったことがあるという。 「そのときは小さな水場を設けて『交代で泳がせています』とごまかしました。実際は一部のカワウソしか泳がせていませんでしたが」  動物愛護団体「PEACE」の東さちこ代表はこう語る。 「カワウソは周囲10㎞という広大なテリトリーを動き回るアクティブな野生動物。肉食獣で鋭い牙を持ち、狂暴な一面もあります。飼うのは非常に難しい。異常行動を起こしてしまうのは、狭いところに閉じ込められるなど動きを制限されていることが大きな原因です。ストレスで免疫力が下がり、病気にもなりやすい。そもそもカワウソは、水辺で家族を中心とした群れで生活する動物です。仲間と引き離されて狭いケージに入れられ、すぐに泳げる水場もありません。これでは、精神も体も病んでしまうのが当然でしょう」  日本で大人気のコツメカワウソは絶滅危惧種で、今年11月26日からワシントン条約により国際商取引が禁止された。カワウソの繁殖は難しく、現在日本には年間150匹が外国から入ってきているが、そのうち正式に輸入されたものは30匹ほどだという。それ以外は密輸だ。ペットショップやカワウソカフェにいるカワウソの多くは、違法に取引されたものということになる。

動物に愛情も知識もない人物が店を経営

動物カフェ 別のカワウソカフェで働いていたDさんは「ウチの店では、モモンガとハリネズミも飼っていました」と語る。 「マネジャーも社長も、動物に対する知識がまったくない。モモンガやハリネズミはよく動く野生動物なんですが、ハムスター用の小さいケージに入れられています。そこから何度も逃げ出そうとして、足にケガをしているハリネズミもいました。また、高い木から低い木へと飛び移るモモンガには高さのある環境が必要なのに、『スペースの関係』ということで狭い場所に閉じ込められていました
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狭い場所から逃げ出そうともがいていたハリネズミは、足の爪や指を負傷していた

 当然、こうした環境では病気になる動物が増えてくる。 「具合の悪くなった子がいて『病院に連れていきたい』と言うと、マネジャーは『様子を見よう』と拒否してばかり。モモンガは偏食で、同じエサをやり続けていたらそれを食べず、低栄養で下痢になってしまう子もいたんです。そこで、個人的にエサを買って与えていたところ、社長に『甘やかしだ』と叱られました」  この店には、Dさんをはじめ、動物に愛情を持って世話をしていたスタッフが多かった。彼らが「動物の扱いを見直してほしい」と訴えると、何と社長は“反抗的な”スタッフ全員を突然解雇してしまったという。
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ハリネズミとモモンガを入れるための小さなケージが並ぶ、動物カフェの店内

 前出の岡田さんはこう解説する。 「最近、カワウソだけではなくチンチラやフェレット、フェネックなど人気の動物を一緒に飼う店が増えています。こうした店の経営者はその動物が好きなのではなく、“商売になるから”人気の動物を扱っていることが多い。野生動物にとっては違う種と一緒の空間に置かれること自体がストレスですし、人間に触られることも大きな負担。こうした野生動物と触れ合わせる営業形態は、欧米諸国はもちろん台湾でも違法です」  訪れた客は「癒やされた」と満足して帰っていくが、癒やされているのは人間の側だけだったのだ。
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賄賂と密輸で「儲かるカワウソ」を入手する輩も
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