「共通テスト記述式導入反対論」への難癖はここがおかしい。センター試験も知らずに政策決定する愚
どのように変わるかはこちらをどうぞ。
この記述式の導入については、賛成、反対の意見が分かれていますが、賛成の方の中には現状がどのようになっているかをご存じないと思われる方も少なくないようなので、今回は疑問に答える形で説明します。
大学入試に限らず、「試験」と呼ばれるものの最大公約数は「公平に評価できるか」ということです。公平に評価できないものは試験ではなく、「くじ引き」と同じなのです。
(注)ここでは、不自然な採点基準は問題にしません。不自然であっても、その採点基準で全員が採点されるのであれば平等と考えます。
また、一部の私立大学は、慢性的な定員割れに悩み、しかも問題を作成するマンパワーも足りず、入試を行うことがかなり厳しい状況のところもあります。そのような大学を学生選抜が「できない大学」と定義することにします。「できない大学」ではない大学を「できる大学」と定義します。
共通テストの記述式の導入に「賛成」あるいは「問題がない」と考える方の意見を集約すると、この試験に対する誤解に基づくものが多くあります。数学の試験に関してその誤解を次のように分類しました。
TypeA:ほとんどの国公立の2次試験が論述形式の記述式であることを知らないタイプ
TypeB:共通テストの問題がすべて記述式の問題の試験であると思っているタイプ
TypeC:共通テストの記述式の問題が短答形式であることを知らないタイプ
TypeD:センター試験の内容を知らない、またはセンター試験がテクニック中心と考えるか何らかの苦い過去をもつことが理由のタイプ
次に、共通テストの数学の記述式を誤解している人の主な意見をあげ、これがどのタイプになるかを記します。
【意見内容誤解のタイプ】
Q.1:数学の力をはかるには、記述式でなければはかれないのでは?:AとC
Q.2:センター数学は4択5択で解答するから思考力が育たない。(元文科大臣):AとD
Q.3:記述式はどんなマークシート方式よりも優れているものなんだ。(元文科大臣):C
Q.4:野党は、今のマークシート型主体の入試のままでよいと思ってるのだろうか。(政治評論家・雑誌編集者):BとD
Q.5:マークシートで本当の能力が測られる時代ではないことを認識すべき。(議員):AとBとC
Q.6:日本は詰込み式の教育から切り替えていくべき。そのためには記述式が必要。(ジャーナリスト):AとC
Q.7:(記述式の方が)技量が如実に現れる。:AとC
Q.8:マークシートなんかテクニックで勝負でき、条件から絞り込むことも可能。これでは入試の質は下がってしまう。センターで厳しいなら、各大学の二次試験で数学、国語の記述式を必須にしたらどうか。:AとCとD
Q.9:丸暗記の色塗りテストより記述の方が高度な試験だ:C
Q.10:センター試験はテクニック的なようなものばかりだから、記述試験で数学の力をきちんとはかってほしい。:CとD
発言者が書かれていないものは、SNS等での意見を集約したものです。これらの中には同じような主張も含まれますが、次ページからそれぞれに対する回答を記します。
2021年1月から実施予定の大学入学共通テスト(以下、「共通テスト」)では、この試験の中で数学と国語に記述式の導入が問題になっています。
【過去記事】⇒
議論の出発点
記述式に賛成をする方に多い誤解
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