大盛況の特別展「三国志」。九州展にも、多くの来場者が詰めかけている
東京国立博物館で大盛況のうちに終了した、
「日中文化交流協定締結40周年記念 特別展『三国志』」が現在、九州国立博物館で開催中だ(2020年1月5日まで)。
東京展に続き、この九州展も大盛況だという。九州国立博物館広報課の佐原史哉さんはこう語る。
「現在の来場者数は8万人を突破、おそらく
会期終了までに10万人を超える見込みです。これは当館でも1年に1度出るかないかの来場者数です。SNS上にあげられているのを見ると、3回、4回と来てくださっているリピーターの方々も多いようです」
その関心の高さや知識量には、中国人も驚くほど。なぜ日本人は、これほど三国志が好きなのだろうか? その魅力を、九州展に先がけて行われた東京展での取材から紹介したい。
「中国の歴史に興味を持ってくれて嬉しい」と中国人来場者
三国志のクライマックスである「赤壁の戦い」を再現した展示。無数の矢が頭上に(写真は九州展のもの)
東京国立博物館で開催されていた特別展「三国志」には、多くの熱狂的な三国志ファンが詰め掛けていた。
図録セットの前売券が発売当日に完売したほどの人気だったという。これを中国の人々はどう感じているのか? 東京展の中国人来場者に聞いてみた。
「中国では、春秋戦国時代のように群雄割拠の時代はほかにもあります。物語としても、水滸伝などたくさん有名な作品があります。特に三国志が人気というわけではないんです。でも、日本では三国志は特別な人気があるようで、びっくりします」(王麗さん)
「日本の三国志好きの人たちが、
マイナーな武将やたくさんのエピソードまで知っているのに驚きます。中国人よりも知識が豊富。でも、
中国の歴史にこれだけ興味を持ってくれるというのは嬉しい」(蔡文雄さん)
三国志展の音声ガイドを務める歌手の吉川晃司さんも、三国志をはじめとする中国史の大ファンだという。「人生の岐路に立ったと感じたとき、三国志の登場人物たちの生きざまに学んだ」と語る(※写真は、東京国立博物館でのもの)
当の中国人でも驚くほどの、日本人の三国志愛。これについて、「
横山三国志、吉川三国志、光栄(現・コーエーテクモゲームス)のゲーム、NHKの人形劇。この4つが、日本人の三国志好きに大きな貢献をしたことは間違いないでしょう」と、三国志展を企画した東京国立博物館の市元塁・主任研究員(好きな武将:司馬懿)は解説する。
「三国志の物語は、中国では陳寿(ちんじゅ)が著した正史の『三国志』、そして小説の『三国志演義』、さらには関羽が神様として崇められるなど、独自の発展を遂げました。その発展線上として、日本では若年層向けの作品が各分野で発表されてきました。今回の展示ではそれらの作品ともコラボしています」
関羽像。青銅製、明時代・15~16世紀、新郷市博物館蔵(写真は九州展のもの)
市元さんは
「三国志の魅力というのは、何といっても『人』です」と語る。
「誰もが魏(ぎ)・蜀(しょく)・呉(ご)のどの国が好きか、どの武将が好きかといったこだわりを持っている。青少年期、他者への興味が高まるときに三国志と出合う。若いときに触れたものは一生モノになりますから。大人になっても楽しめるし、また新たな発見もある。日本人の三国志好きは、これからもずっと続いていくのでしょうね」