麻薬潜水艦はなんと「使い捨て」。カナリア諸島には麻薬潜水艦の墓場が!?

潜水艦は使い捨て。カナリア諸島には「麻薬潜水艦墓場」が!?

 高額な建造費をかけてでも使い捨ての潜水艦を作る理由は、コカイン売買がそれだけの利益を生むからだ。  例えば、コロンビア辺りからメキシコに送られるだけでも価格は500%高い相場になっているそうだ。それが米国の主要都市ではさらに70%以上の値上がりをするのである。単価がもともと高いので、密売業者には莫大な利益がもたらされることになる。それはヨーロッパに密輸する場合も同様だ。  使い捨てである為、カナリア諸島やアゾレス諸島あたりには1回航海しただけの潜水艦が15-20隻沈められて放棄された墓場があるはずだと専門家は見ているという。  海中を航海するだけの水圧には耐える構造にはなっておらず、水面から1メール下のあたりを航海するような構造で、潜望鏡もひとつ付いているだけで海面上で起きていることをチェックして危険を避けるための役目だけだ。レーダーで検出されることは容易ではないとしている。そのサイズからクジラと混同されることがあるそうだ。(参照:「La Razon」、「Clarin」)

乗組員にとっては「死と隣り合わせ」

 しかし、乗務員にとっては死との戦いなのである。この潜水艦の元乗務員で現在懲役27年の刑に服しているある人物がウニビシオン(米国でスペイン語の最大テレビ放送)のインタビューに次ぎのような回答をしている。  (艦内では)殆ど呼吸できないような状況だという。彼の兄弟のひとりは艦内の水圧と暑さで心臓発作を起こして亡くなった。乗務員の大半は漁師だそうだ。漁ではひと月200ドルしか稼げないのが、この潜水艦での航海だと機関士は2万5000ドル(270万円)で一般の航海士は1万ドル(110万円)稼げる。しかも、信頼されていれば50%前金を貰える。  また、海上で麻薬の荷受けの仕事をする場合も一日に400-500ドル(43000円ー54000円)稼げる。漁師だと漁でひと月働いてもこれだけのお金は稼げない。  しかし、危険性は2倍だ。警察に見つかれば実刑の判決が下り、カルテルからは完全に見放されることになる。  また、別の元乗務員はこの航海にも汚職が蔓延っており、刑務所に服役中のカルテルのリーダーだと、いつ密輸が実施されるといったことを警察に密告。そのようにして、自らの刑を軽減してもらうのだそうだ。(参照:「Infobae」)  南米からの麻薬のヨーロッパでの最大密入国はベルギー、オランダ、スペインだ。スペインで最初に麻薬の受け入れ地域として発展したのがガリシア地方である。それを示すように今回の潜水艦事件が起きたのももガリシアだった。 <文・白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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