うつ病で水も飲めない被収容者が治療を希望しているが、入館は拒否
ダヌカさん名義のパスポート。スリランカ大使館は、これが間違いなく本人のものだと認定している
本当に、このままでは死んでしまう。
70kgあった体重が50kgになるほどに、食べては吐くことを繰り返している外国人が放置されているのだ。
法務省の出入国在留管理庁入管庁(以下、入管庁)の収容施設の一つ、「
東日本入国管理センター」(茨城県牛久市。以下、牛久入管)には、300人強の外国人が収容されている。
大ざっぱに言えば、その
3分の2が難民認定申請をしたものの不許可になった人たち。残り3分の1が日本滞在中に何かしらのルール違反(不法就労や刑事事件など)を起こした人たちだ。
だが、スリランカ出身のダヌカさんの場合は、
そのどれでもない。スリランカ大使館も「間違いなく本人」と認めているのに、日本政府は「他人である」として、もう2年以上も収容を解いていないという極めて特異な事例である。
そのダヌカさんがここ数か月で体調を崩し、食べては吐くことを繰り返している。長期収容の影響で
「うつ病」と診断され、その服薬のために飲む水も吐いている。極めて重症だ。だが、本人は治療を希望し
「せめて点滴を」と求めているのに、牛久入管はこれを拒否しているという。取り返しのつかないことになったらもう遅い。
日本政府は「P氏がダヌカ名義のパスポートで入国」と認識
ダヌカさんが収容されている牛久入管
ダヌカさんは1998年、16歳で初来日。ブローカーの「未成年では日本のビザを取得できない」との説明を信じ、成人のP氏名義の偽造パスポートで入国した。その後10年間、土木現場などで働くが、2008年に不法滞在が発覚し強制送還された。
このとき入管は、P氏名義のパスポートからダヌカさんをP氏と認識。ダヌカさんも面倒を避けるため、本名を明かさず帰国した。
ダヌカさんは帰国後、貿易会社を設立。そして2010年11月4日、「貿易をしたい」との日本人Yとの商談のために再来日した。このときは本人名義の正式パスポートと90日間のビザを携えて入国した。
ところが、Yの会社は詐欺目的の架空会社。Yは500万円の出資を強要するが、ダヌカさんが応じないと知ると、警察と入管にダヌカさんを売った。
目的は「釈放されるにもカネが必要。私に預ければそれができる」と強請ることでカネを入手するためだ。ダヌカさんはそれを拒否した。そこで起きた問題は、日本政府が「P氏がダヌカ名義のパスポートで入国」と認識したことだ。