スリランカ大使館が「間違いなくダヌカ本人」と認めるも、日本政府は認めず
スリランカ大使館は「ダヌカ氏はダヌカである」と証明してい
その後ダヌカさんは、出入国管理法違反での刑事裁判を受け、横浜刑務所に2年間服役する。その服役中に事態が変わった。2012年、「自分はダヌカである」との訴えに
、在日スリランカ大使館が「間違いなくダヌカ本人だ」との証明書を出したのだ。
本来なら、これで日本政府も本人だと認め、ダヌカさんは帰国できるはずだった。だが2013年3月までP氏として服役したダヌカさんは、出所後、在留資格がないため、即時に東京出入国在留管理局(東京都港区。以下、東京入管)にやはり
P氏として収容された。
8か月後に仮放免(一時的に収容を解く措置。就労は禁止)され、2015年には日本人女性Aさんと出会い婚約する。
仮放免は1~2か月ごとに更新(延長)手続きを取らねばならない。2017年7月6日、ダヌカさんは東京入管で更新の不許可を告げられると、その場で収容されて数か月後に牛久入管へ移送された。そして今に至っている。
「一生ここで過ごすのか」という不安から、うつ病を発症
ダヌカさんが書いた手紙。自分の名前が無視され、他人として収容されていることに怒りを覚えている
問題は、スリランカ大使館がダヌカさんをダヌカだと認めていることだ。日本政府が強制送還しようにも、別人であるP氏名義のパスポートをスリランカ大使館が発行するはずもない。そのため、ダヌカさんは強制送還すらされず、生涯を牛久入管で過ごす可能性がある。
ダヌカさんは何度も仮放免申請を出すが、3か月待っていつも不許可。「自分は一生ここで過ごすのか……」という不安から、ダヌカさんは9月下旬に「うつ病」を発症してしまう。同時に、食べては吐くという体調悪化に陥った。
筆者は9月27日にダヌカさんに面会取材したが、体力をなくしたダヌカさんは車椅子で現れ、腕は枝のように細くなっていた。毎週ダヌカさんを面会する日本人婚約者のAさんも「あんなに穏やかだった人がいま、気分の上下が激しくなっている。不眠のため、目の下の隈が真っ黒です。仮放免しないと彼が壊れる」と強い不安を抱いている。
入管は以前の間違いを認めず、メンツのために収容している
ダヌカさんの手紙をもつ婚約者のAさん。「彼とならどこに住んでもいい。まずは収容所から出してあげたい」
関係者はこう推測する。
「入管は、ダヌカはダヌカだと知っているはず。でもそれを認めれば、以前のP氏としての扱いが間違いだったことになる。メンツのために収容している」
そして11月に入ってから、Aさんからの連絡内容は悲惨なことになっている。「せめて点滴を」と求めているダヌカさんの要請を、入管が拒んでいるというのだ。
11月15日に面会したときには、ふくらはぎは枝のように細くなっていた。そして、70kgあった体重は11月末にはついに50kgにまで減った。極めて危険なレベルにいる。
牛久入管では、今年5月から仮放免を求めての集団ハンストが行われているが、仮放免される一つの目安は10kg以上の体重減である。だがダヌカさんは20kgやせても仮放免される気配もない。
この状況を変えるには世論を高めるしかない。
そう考えた有志が11月末に市民団体「ダヌカさんを支援する会」を設立し、一日も早い解放を訴えている。
役所は世間の目を気にする。「支援する会」では「関心をもってくれた人は、牛久入管に電話やFAXで仮放免を求めてほしい」と要請している。
<文・写真/樫田秀樹>