そうした基礎的な練習を経て、午後からはよりシクロクロスの競技に近づけたメニューをこなす子どもたち。中でも目を引くのが、木製のパンプトラックだ。
「パンプトラック」とは、波打つような走路を、スケートボードやBMXなどを上下の体重移動(パンピング)だけを推進力として進むもので、近年はモジュラー式のものを設置する場所も増えている。今回使われたパンプトラックも、トラックを使って“デリバリー”されたものなのだが、なんと市販品ではなく「自作」なんだとか。
トラックを作ったのは、自身も自転車が大好きだと言う、建築会社を営む小島正治氏だ。
「パンプトラックはユーチューブやネット上の情報をもとに自作しました。町田や相模原近辺を中心に、“まちさが里山サイクリングの会”とともに地元のお祭りなど理解を得ながら走れる場所を探すうち、TCFさんからも声をかけていただいたんです。
自転車で走れるのは平らなところだけじゃないと知ってもらうことでスキルアップにも繋がります。また、山や道路、そしてこのパンプトラックのような道も誰かが作り、保守しているんだと知ってもらいたかったんです。自分が作ったものを見てもらい、実際に乗ってもらえるのは嬉しいですね」
まさにコースを通して人も繋げてきたというわけだ。運びやすさが重要となるトラックはそれほど長くないが、そんななかにも職人の技術が詰まっている。
「夜な夜な仕事のあとに作り続けて、完成するまでには3か月ほどかかりました。特に難しかったのは起伏の激しいR(こぶ)の部分とカーブの部分を繋ぐひねりの部分です。船大工や宮大工の技術にも共通しますが、糸を何本も張って骨組みを作り、幅の狭い板をカンナで削りながら組み合わせていきました」
そんなパンプトラックは起伏で上下する際、ペダルを漕がずに体の重心移動で推進力を得るのだという。実際に見るとなかなか走るのが怖そう。大人から見ても腰が引けてしまうが、子どもたちが走り始めると……。
う、うまい! 小島氏が「午前と午後で全然違いますね」と語るように、子どもたちの成長力恐るべしである。
ペダルを漕がず走り抜けていくため、カーブに入る位置どりや進行方向への視線の合わせ方が重要となるらしいのだが、みんな上手。筆者も年齢や技術で分けられた各グループがひと通り走り終わったあと、挑戦しないか声をかけられたが、怖気づいてしまった。