クウェー川鉄橋の手前にある国鉄駅
カンチャナブリ県はそんな戦争経験があるので、地元民には日本人に対してなんらかしらの反感などがあるのではないか、という懸念があるかもしれない。
確かに、タイ南部が国境を接しているマレーシアは、タイよりは歴史的なものからくる日本への反感が地元民に垣間見られる。近年は減っているはずだが、20年くらい前は「日本人お断り」を掲げる宿などもあったほどだ。
これは近くにあるペナン島が影響していると考えられる。マレーシアのペナン島は現在もそうだが、中華系住民が少なくない。戦時中、日中戦争開戦と同時に抗日レジスタンスがおり、ペナン島に進駐した日本軍が虐殺を行ったとされる。そのため、地域住民の中にはいまだに日本人に反感を持っている人もいるようなのだ。
しかし、カンチャナブリではそのようなことはあまりない。地元住民に日本、そして日本人についてどう思うか訊くと、ほとんどが「好き」と答えるか「なんとも思っていない」かで、「嫌い」と言う人は、少なくとも筆者の聞き込みではいなかった。
カンチャナブリ県も日本人にとって最適な観光地で、今回のイベント「平和碑文としてのクウェー川鉄橋」を楽しんでもらいたいところだ。
お祭りの演劇以外にも日本の蒸気機関車を見るチャンス
動態保存されている2両のC56は、それぞれ713、715という車両番号が与えられている
この祭りは11月23日~12月2日の約1週間の日程になっている。例年、だいたい1週間くらいのようだが、今年は演劇に用意された1200席はすべて無料となっている。昨年は1席1000バーツ(約3500円)ほどしたらしいので、かなりお得だ。ただし、予約が必要で、毎日16時から会場前で受けつける。外国人はパスポートを持参すれば席を確保できると発表されている。
演劇は1日1~2回の上演だ。本記事掲載後の日程だと、11月30日は19時と20時半、12月1日は19時のみ。2日の最終日は上演の予定はない。
カンチャナブリまでは車、あるいは南バスターミナルから長距離バスで2時間程度なので、バンコク旅行のついでに時間があれば足を運んでみてほしい。あるいは、C56形ではないが、日本製のパシフィック形蒸気機関車がタイ国鉄の中央駅であるホアランポーン駅(国鉄バンコク駅)から、例年通りであれば12月5日朝8時に出発する予定だ。この次はおそらくタイ国鉄の日なので、2020年3月26日だろう。
12月5日は日本の古い蒸気機関車をタイで見る、2019年最後のチャンスである。
<取材・文・撮影/高田胤臣>