「余裕がない人や地方に住んでいる人の機会を奪うのは私の理念と反する」
日本では、英語の民間試験導入に対し、試験の受験料が高く、余裕のある家庭の生徒が有利になるといった批判の声が上がった。テストセンターのない地方在住の生徒が不利になることも繰り返し指摘された。結局、萩生田光一厚労相の失言で導入が見送られたものの、導入に向けた議論が再燃する危険がある。
「日本では
私たちが目指すゴールとは真逆のことが起きています。私たちは経済格差をなくすために、安くてどこからでも受けられるテストを作りました。しかし従来の試験は高く、テストセンターが近くになければ受けられないのです。経済上の余裕がない人や地方に住んでいる人の機会を奪っていると思います。
しかし残念ながら、日本だけではなく、諸外国でも同じようなことが起こっています。だからこそ私たちの新しいテストが必要なのです」
現在、日本人のユーザーの数はおよそ370万人。欧米のユーザーに比べると、継続して学習するものの、話すのが苦手だという特徴がある。
「日本人のユーザーの特徴としては、
毎日継続する日数が長いということが挙げられます。また、話すのが苦手だという傾向が顕著に出ています。英語を話せるようになるためには、
間違えても気にしないという気持ちで話していくことが必要です。スピーキング力の伸びが早い人は、英語を学習し始めてすぐにどんどん話していますよ」
Duolingoでは、英語での会話が苦手な日本人に向け、少人数で会って話すイベントを設けている。ルイスCEOは「ぜひ活用してほしい」と話す。
Duolingoは、新たに日本人向けの中国語コースも新設し、ますます成長していきそうな勢いだ。さらに今後は「文盲の人が母国語を読み書きできるようになるコースも設けたい」という。「日本とは異なり、諸外国では識字率が低いことも珍しくありません」(ルイスCEO)
無料のアプリで文字を読み書きできるようになれば、識字率が上がる可能性も高い。そこからさらに「Duolingo」を活用すれば、非英語圏の貧しい人も英語などの習得が可能になり、就労やさらなる高等教育の機会も増えていくはずだ。
イノベーションとテクノロジーで社会を変える。天才起業家の目は、目先の利益だけでなく、社会全体の利益へと向いているのだ。
<取材・文/HBO編集部>