7年政権維持をしても拭えぬ、国民の「将来不安」。年金への不信はどう払拭すべきなのか?

将来への不安

S. Hermann & F. Richter via Pixabay

「将来不安」が拭えないまま7年の長期政権となっている歪さ

 安倍晋三氏が憲政史上最長の首相となった。しかし、多くの識者から立憲主義を踏みにじると批判され、この秋も重要閣僚の辞任も相次ぐ危うさを抱えている。それどころか、森友、加計学園問題に続いて、桜を見る会問題でも自ら疑惑の渦中にある。  ただ、世論調査での支持率はそれほど下がらない。メディアがかつてのように批判的精神を持ってないからだという指摘もあるが、ドナルド・トランプ米大統領と同じく、安倍首相にも盤石の熱狂的支持層がいるからというのが本当のところだろう。やはり、その安定感は抜群だと言える。自民党内では四選目をという期待の声もある。これは、人気絶頂であったにも関わらず、任期が来たからと自ら退いた小泉純一郎首相と真逆だ。  安倍首相はその政治権力の下で戦後レジームの転換の総仕上げをしたいのだろう。平和安全法制(野党からは戦争法となじられた)、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法(反対派は共謀罪と批判)だけでなく、日本国憲法を変えたいのだ。  自民党の現職議員からは、国民主権、平和主義、基本的人権があるいまの憲法は変えるべきだという発言まで出て、そら恐ろしくなる。改正なのか、改悪なのか、私には判断がつかない。  ただ、多くの国民、有権者が一番に望んでいるのは憲法改正ではない事だけははっきりしている求めているのは、いまの国民生活をもう少し良くしてほしいということだし、具体的には社会保障の改革で、将来が見える制度を構築して欲しいと望んでいるのだ。これは各種世論調査を見ても明らかだ。

不安の根源たる日本の2大「社会保障制度」

 その不安は、社会保障制度の二大柱、健康保険制度と国民年金制度に対する国民の信頼がこの20年余りどんどん下がっていることに現れている。  給料から強制的に天引きされる厚生年金などと違い、自営業者やフリーランス、学生、厚生年金などのない職場で働く非正規労働者などは、第一号被保険者と分類されるのだが、自らコンビニや金融機関に支払いに行くか、あるいは銀行口座などから公共料金のように引き落とされる国民年金を払わなければならない。その保険料は令和元年は毎月1万6410円。高額だ。払いたくても払えない人が多数いる。  誰も老後に年金がない生活を望んでいるはずがない。私がメディアで国民年金の制度について説明し、そのカネの出どころについても「もはや財源の半分は税金ですから、国民年金の保険料はすでに半分納めているようなものなんです。しかし、毎月の保険料を納めないと、将来年金はもらえないんですよ」と説明すると多くの人がうなづいてくれる。なるほどと理解もしてくれる。しかし、じゃあ、納めてくれますか?と尋ねると、しないという。無理だからというのだ。  納めたくても払えない。老後の生活のことよりも、まずは目の前の日々の生活を何とかやりくりするだけで精一杯、そういう経済状況に追いやられている層が少なくないのだ。 「老後を迎えるのが怖い」ーー。懸命に働く若者がふと漏らした一言を私は忘れられない。非正規労働者として働いているが、手取り15万円ほどでは、毎月1万6千円以上の国民年金の保険料はとても払えないのは理解できる。  老後になって国民年金の基礎年金だけでは暮らしていけないのに、その基礎年金さえももらう準備さえしていないのだ。今や比較的恵まれたと言える、中堅や大企業のサラリーマンや公務員が納める毎月の厚生年金でもらえる老齢厚生年金でも老後の生活は支えられない。年金2000万円問題とは、厚生年金を納めている従来型の雇用状態の人に対しての警鐘だった。これが話題になったのは、つい半年前のことだ。
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微調整だけでお茶を濁してきた政府与党の年金改革
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