被写体と出会うことは、困難を極めた。
それでも、前述の石井さんらが企画に協力し、1年が経過すると、10組の夫婦のポートレート写真展の開催を11/18(月)~11/24(日)に東京メトロ・表参道駅で実現できるようになった。11月22日は、いい夫婦の日。宮本さんは、メディア向けプレスリリースにこう書いた。
「世の中にはたくさんいらっしゃるはずなのに普段お目にかかることも少ないそう言った方達も、いわゆる健常者と同じように生活していらして、
特別視する存在ではないということもお伝えしたいと思います」
被写体になった人々の間では、「撮影して下さり有難うございました」「うちの奥さんとの写真も展示してもらってるとか嬉しい過ぎー!」とツイートしたり、展示された写真の前で記念撮影するなど、好評を博しているようだ。
被写体に応募する勇気が出なかった当事者も、ユニークフェイス夫婦が仲良く写っている大きな写真を前に、一歩踏み出せる勇気をもらえるかもしれない。
今回の写真展の価値について、30年ほどユニークフェイスの当事者を取材してきた石井さんは、こう語った。
「初日に行ってみました。すべてモノクロ写真なので、(肌の色がなく)フラットに見れました。あれだけ引き伸ばして人間の顔形を奥行深く撮るのは、考え抜かれたものだと思います。報道系のカメラマンでは、こういう写真展は一度もありませんでした。
当事者を撮影したプロカメラマンの写真展は21世紀初頭に『ジロジロ見ないで―“普通の顔”を喪った9人の物語』という本の巡回写真展としてありましたが、それが僕が記憶する限りエポックメイキングな出来事で、大きな写真展はほかになかったと思います。
今回、カップルでの撮影は世界初かもしれません。非常に画期的です。みんなびっくりして見るんじゃないですかね。多くの当事者はほかの当事者の生々しい生活を知らないままなので、希望を与えると思います。
表参道はファッション・ビジネスの最先端の街なので、仕事上、この写真展に刺激される方も多いと期待してます。宮本さんは企画段階で、『ふつうとは違う外見の人たちの中にある美を写したい』と言われていました。
それを聞き、僕は
人間の顔の多様性、複雑さをファッションカメラマンの美意識で表現できると期待し、今回それが実現できたと思っています」
<文/今一生>
フリーライター&書籍編集者。
1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。
その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。
著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。