安倍総理、異例のぶら下がり取材対応。どこで言い澱み、どこで論点をすり替えた?<信号無視話法分析>

後援会活動なのに収支報告書への記載は本当に必要ないのか?

20191115 ぶら下がり会見 安倍総理.分析4 最後の7点目の質問は収支報告書について。(首相官邸HPの映像では17:45〜18:53)  記者の質問内容は以下の通り。 記者:「後援会の活動であれば、収支報告書への記載が必要だが、その点の認識は?」  この質問に対する安倍総理の回答。 安倍総理:収支報告書への記載は、収支が発生して、えー、それは発生するんです。あのー、これは公職選挙法を見ていただければ明らかなんですが、えー、それは収支報告書、お、せいしん、せいしん、せいほうじょうですね、あ、政治資金規正法上、収支が発生して初めて、えー、記入義務が生じます今申し上げましたように、えー、交通費、宿泊費等について、直接、えー、代理店に支払っていれば、これは後援会に収支は発生しません。えー、前夜祭についても、えー、ホテルが領収書を出し、そして、えー、そこで入ったお金をそのままホテルにわ、渡していれば、収支は発生しないわけでありますから、えー、政治資金規正法上の、おー、違反には全く当たらないということであります。で、その際ですね、事務所の者が、えー、そこで受付をするということは、これは問題ないということでございます。(青信号)」  質問は、収支報告書への記載の必要性についての総理の「認識」という曖昧な聞き方をしているため、それに関係する認識を述べている安倍総理の回答は全て青信号と判定した。ただし、不要な言葉や意味不明な言葉を意味する灰色(本文では地の色で記載)が極端に多く、特に冒頭は何を言っているのかよく分からない。  そもそも、このホテルの領収書に関する説明には多くの疑問と問題点があり、弁護士・郷原信郎氏が自身のブログで詳しく解説されている。  以上、本記事で取り上げた質問7点に対する安倍総理の回答をまとめると、次のことが言える。 ・公職選挙法違反に直結する質問(1点目、7点目)になると、言い澱みが極端に多くなる ・総理自身の関与に関する質問(3点目)、参加者の実態や偏りに関する質問(4点目、6点目)に対して、論点をすり替えている  とてもではないが幕引きを図れるような状態でないことは明らかだ。  しかし、このぶら下がり会見の翌日(11月16日)という実に絶妙なタイミングで薬物所持で逮捕された女優・沢尻エリカ氏の報道にメディア各社は時間を割き始めている。思い返せば、2016年の年初に甘利明氏(当時・経済再生担当相)への政治献金疑惑が問題になったタイミングでは、清原和博氏。今年3月に辺野古基地反対の民意が高まったタイミングでは、ピエール瀧氏。  これを「大衆の目を逸らすためのスピン」などと安易に陰謀論的な話に結びつけることは避けたいが、少なくともメディアはこの芸能人の逮捕によって、政権の疑惑が覆い隠されるようなことにならないように、しっかりと取材・追及を続け、報道していただきたい。 <文・図版作成/犬飼淳>
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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