何気なく利用する「クラウド翻訳」のリスク。Firefoxのオフライン型翻訳機能実装計画から考える

クラウド時代のプライベートとセキュリティ

 昔は、ローカルにインストールして使う翻訳ソフトをよく見かけた。しかし、現在はクラウドでの翻訳が主流になっている。Mozilla Firefox がやろうとしていることは、時代に逆行するものだ。しかし、セキュリティ的な問題や、プライベートを守るのには有効な一手となる。  現在は、クラウドを利用して翻訳を代行してもらえる便利な時代だ。他人や外部の会社を利用すれば、簡単に自分の能力を拡張できる。  しかし、そうした時代だからこそ、翻訳などを自力でおこなえることは、逆に意味を持つ。翻訳せずに自分で読める人は、プライベートやセキュリティを気にする必要はない。能力を手軽に拡張できる時代だからこそ、自力でできる、あるいは手元のコンピューターでおこなえることは価値を持つ。  そうした意味で、Mozilla Firefox の取り組みは注目に値する。しかし、ひとつだけ残念なことは、英語から日本語の翻訳が難しそうな点だ。公開されているデモは、英語とドイツ語の翻訳だ。  日本語に対応してくれるといいなとは思うが、難しそうだなというのが正直なところだ。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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