政党との関係の強い団体に利益を分配するのか、一定の基準で公正に利益を分配するのかは、政治の大きな選択肢です。税金や法令を一部の人々の利益に使うのが、政治の役割です。そこに、政党の違いはありません。けれども、それを政治が恣意的に行うのか、それとも基準を定めて公正に行うのかは、論点です。
自民党は、党との関係の強い団体に、利益を分配することを推進する政党です。スローガンや公約はどうあれ、長年にわたり、それを推進し、擁護してきました。ですから、自民党を支持するということは、税金などを支持団体へ恣意的に分配することを認めることを意味します。だから、二階幹事長の発言は「当然」と発言したのです。
一方、立憲民主党や共産党などの
野党は、市民連合との共通政策で示されるように、一定の基準で公正に分配することを求める勢力といえるでしょう。共通政策には「透明性が高く公平な行政の確立」があります。その考え方に立てば、桜を見る会のあり方は、大きな問題となります。実際、
野党は共同してこの問題を追及すると報じられています。
さて、二大論点のもう一つ、
桜を見る会を税金で開催することの是非も問われなければなりません。民主党政権でも実施されていたことから、
元大阪市長の橋下徹氏は「野党が安倍政権を追及するのも茶番」と述べ、即時中止を主張しています。
ただ、気をつけなければならないのは、開催の是非という論点に目が行き過ぎると、第一の論点である
「自民党政権による税金の私物化」が霞んでしまうことです。橋下氏や日本維新の会の趣旨が、第一論点の目くらましにあるとは思いませんが、結果としてそうならないよう、気をつける必要があります。
税金の私物化は、自民党政権の是非を直接的に問う、重大な論点です。二階幹事長は、国政選挙での自民党勝利の結果でもって、税金の私物化を正当化する論理に立っています。
第一は、
自民党政権による恣意的な利益の分配(税金の私物化)を是認する選択肢。第二は、
立憲民主党などの野党による公正な分配を推進する選択肢。第三は、
維新の会による分配そのものを止めていく(行政の役割縮小)選択肢。
有権者はどの選択肢を選ぶべきか。桜を見る会の問題は、政権をめぐる重大な争点を提示しているのです。
<文/田中信一郎>