このように演習していくと、そもそも顧客の反応が「製品はよいが、価格が高い」という構文ではなく、「価格が高い」とだけ言われた場合は、結語転換話法は使えないのかという意見に接することがある。
「価格が高い」とだけ言われた場合は、「○○はよいが、価格が高い」と顧客に言わせさえすれば、結語転換話法へ導くことができる。そのためには、顧客から「価格が高い」と言われたら、「そうお考えなのですね。何か気に入っている点が、もしあれば教えていただけますか」と聞いてみればよい。
「製品はよいと思っている」という答えが返ってきたら、「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」と返せばよい。そうすれば、製品の良し悪しの話題に誘導することができる。
間違っても「製品はよいと思っているが、価格が高いと思っているのですね」と返してはいけない。結語の価格の話になって、価格交渉に陥ってしまうからだ。
この結語転換話法に持ち込むことができると、営業の成約率が上がる。顧客が反応を示さなかった場合には、「何か気になることはありませんか」と聞けばよい。「価格が高い」という返答があれば、「ほかに何か気になっている点はありませんか」と聞いてみればよい。「製品はよいと思っている」という返答があれば、これで「価格が高いと思っているが、製品はよいと思っているのですね」という構文が成立するのだ。
質問:「同意+転換」は どのように行えばよいか
相手の考え方に対して、「同意+転換」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?
回答:前段と後段を転換する
相手の考え方が、「Aだけれども、B」というように、「Aについて一定の評価はしているものの、だから反対だ」という構造だった場合、前段と後段を転換し、「Bだけれども、A」というようにして、「Bのように考えているけれども、Aについては認めている」と言い換える方法です。
日本語は、結論が後段に位置されがちですから、前段と後段を入れ替えて、後段にAを持ってくることによって、相手の考え方をBではなくてAに誘導しやすくなります。同意+転換を行ったあとは、Aについて議論がしやすくなります。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第162回】