刑務所内から司令を出し、独房にはジェットバスまで完備!? 知られざるブラジルの麻薬カルテル

刑務所内にジェットバスや情婦まで所有し、抗争も

 カルテルの存在がメディアを通して一般に良く知られるようになった最初の事件は、2015年6月と7月にマナオスの刑務所内でPCCの3人のリーダーが殺害されたことである。そして7月17日から20日にかけて同じくPCCのメンバー38人がマナオスの市街で殺害された。実行犯は軍事警官だと推察された。マナオスはFDNの縄張りで、彼らの反対を無視して新しくメンバーを募っていた麻薬グループが背後からこの犯罪の糸を引いたのであった。  その2年後の2017年1月にはFDNがPCCのメンバー60人を刑務所内で殺害するという事件が起きた。その動機となったのはアマゾン地帯における麻薬の密輸ルートの縄張り争いからであった。特にアマゾン地帯はFDNが支配している地域で、そこにPCCが入り込もうとしたのが双方の争いの発端で、それが刑務所内で殺害事件となって具体化したのであった。(参照:「Infobae」、「Info Amazonia」)  今年1月にボルソナロがカルテルの活動を阻止して犯罪を徹底して取り締まることを公約して大統領になって軍隊と連邦警察から500人をカルテルが本部にしている刑務所に送り込んで取り調べを行った時に400個の携帯電話が検出されたそうだ。携帯電話の刑務所内への持ち込みは禁止されているが、盲点をついて持ち込んでいたのである。さらに、刑務所内のカルテルのリーダーの独房にはビデオコンソール、水流浴槽まで検出され、売春婦までいたことが判明したそうだ。(参照:「El Periodico」)

功を奏さなかったボルソナロの取り締まり

 カルテルはボルソナロの取り締まりに反抗して、ボルソナロが大統領に就任した正に今年1月1日にセアラー州でバスや商店を襲撃し、同州の首府フォルタレザに通じる幹線道路を遮断するという手段で抵抗して来た。  それ以後も彼らによる犯罪は止むことがなく、2つの橋を爆破、通学スクールバスに放火、銀行支店を破壊、市街の主要商店街を閉店に追い込むまでに過激化したという。  全面戦争に入るとビデオに訴えて観光者を脅す手段も取った。特に、この犯罪行為が過激となったのは、セアラー州の刑務所管理局長に新たにルイス・マウロが就任して携帯電話の刑務所への持ち込みを厳しく取り締まり、各刑務所ごとにカルテルを分離させて来たのを廃止すると表明してからだという。(参照:「Infobae」)
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麻薬カルテルの背景にある貧困、格差の問題
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