「微表情の犯罪者検知率はたったの1%」これでは使えないのか?
『微表情を読む技術は使えない』説の誤解を説く」と題した記事を書きました。その記事では、微表情を批判する論拠となっている有名な論文の問題点をあげ、微表情を読む技術が有効であることを論じました。
今回は、微表情の有効性を否定する論拠としてよく取り上げられる別の事例、すなわち、空港警備における微表情検知の問題を通じて微表情の可能性について論じたいと思います。
2010年に発表されたレポートによると、アメリカの161の空港で勤務する3,000人以上の空港警備に関わる職員が、微表情検知を含む乗客の異常行動を検知するプログラムを受けているとのことです。
このプログラムを受けた職員が、2006年1月から2009年11月にかけて最初のスクリーニングをパスさせず第二スクリーニングに回すと判断した乗客の数は232,000人おり、そのうち実際に逮捕された乗客の数は、1,710人であったことがわかっています。
逮捕に至っていない乗客を確実に無実の者と単純に考えると、職員が「おかしい」と判断した乗客の約0.7%だけが真におかしかった、つまり、本当の犯罪者だったということになります。
このデータをもって、微表情は「使えない」と主張する方々がいます。しかし、私はそうは思いません。理由は2つあります。一つは、一つの事例から一般化をすることはおかしい、ということです。
もう一つは、検知対象者が極少数の場合、たとえ精度の高い検知ツールを用いたとしても誤判定は多く出る性質にある、ということです。
一つ目の理由は単純です。「空港警備で微表情は使えない」が事実であったとしても、その一つの事例から「どこでも微表情は使えない」という一般化をすることはおかしい、ということです。
これは微表情に限らず、様々な話題で観られ、議論に慣れていない方がよくする論法です。
少数の事例を持って、「○○は使える」「▽▽は使えない」と断じます。広く全体を観ずに少数の事例だけを恣意的にピックアップすれば、何でも自分の考えにあった事例を見つけ出すことができます。
代替療法、健康・美容器具、超常現象などなどでおなじみです。微表情が使える・使えないを一般化して論じたいならば、様々な状況別のデータを得、論じなくてはなりません。
なお、私は、微表情の専門家であり、当然、微表情肯定派ですが、微表情がどんな状況でも有効であるとは思いません。
どんなとき有効か有効ではないかは、大まかには過去記事「『微表情を読む技術は使えない』説の誤解を説く」で、より具体的には過去記事の様々な場面で論じてきましたので、ここでは繰り返しません。
2018年10月2日付の投稿で「微表情で犯罪者を検知できる割合は1%以下!?
誤判定の事例を広い角度で捉えることが不可欠
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