このように申し上げたり、演習していると、そもそも論として、「ビジネスにおいては、相手が反対しようが対立しようが、やり遂げなければならないことがある。従って、同意+示唆のような生ぬるい、まどろっこしいやり方ではダメで、強く断言して、あれこれ言わせず、やり通さなければならない」という見解に接することがある。いわば、トップダウンの指示・命令だ。
私はトップダウンの指示・命令の必要性を否定しない。トップダウンでやらなければならない場面はたくさんある。法律を守る、コンプライアンスを遵守する、品質管理する……。誰が何と言おうとやり遂げなければならない。
そういう場面では、トップダウンの話法を用いればよい。トップダウンには強制力が働き、必ずしも腹落ち度合が十分でなくなる、いわば見せ掛けの合意に留まってしまうというリスクがある。それを織り込んでもトップダウンでやらせきらない場面はある。
しかし、トップダウンでやらなくてもよい場面や、トップダウンでやらない方がよい場面にまで、トップダウンの話法を繰り出していないかと問いたい。相手を巻き込みたいときは、トップダウンとは真逆のボトムアップ手法で巻き込めばよい。
そのような場面では、やわらかに相手を誘導して、合意形成していけばよいのだ。それにより、見せ掛けの合意を回避することができる。「同意+示唆」の話法は、そのための有効なリアクション誘導話法なのだ。
質問:「同意+示唆」はどのように行えばよいか
相手の考え方に対して、「同意+示唆」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?
回答:相手の考え方に関連付けて、自分の考えを示唆してみる
相手の考え方に対して同意したうえで、自分の考え方を示唆する方法です。自分の考え方を主張することと異なり、示唆するだけですので、相手の考え方に沿いながら誘導することができます。
示唆する内容が相手の考え方に近ければ誘導の幅は小さくなり、抵抗感を持たせるリスクは小さくなります。示唆する内容が、自分の考え方に近ければ、誘導の幅は大きくなり、抵抗感を持たせるリスクは大きくなります。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第161回】