お客に「オプション」をつけさせるのがうまいセールスマン、下手なセールスマンの差はどこにある?

オプションをつけさせるのがうまい営業マン

ufabizphoto / PIXTA(ピクスタ)

 見解の異なる相手の考え方を、自分の考え方に誘導したい……。そんな場面に直面するビジネスパーソンは実に多い。一対一の対話でも、一対多数の会議でも、あるいはプライベートの場面でも、それができれば苦労しない。

前向きなフレーズに含まれる「アンカリング力」

 しかし、相手にわかってもらおうと自分の意見を主張すればするほど、相手は相手の意見に固執してしまい、そのうちに険悪な雰囲気になってしまう。かといって、相手の意見に合わせていてばかりでは、仕事が進まない。  なんとか相手と対立することなく、相手を誘導することができないだろうか? そのために最も簡単な話法が、「同意+経験」話法だ。  「同意+経験」話法とは、相手の言っていることに理解を示したうえで、自分の経験を話すということだ。相手の見解を聞きながら、相手の話している内容に関連している自分の経験を思いおこして話す。実際に経験していることが相手を引きつけるパワーを持ち、ひいては誘導しやすくなる。  私は相手を引きつけるパワーを持つフレーズのことを、「アンカリングのあるフレーズ」と呼んでいる。アンカリングとは、船の碇のアンカーに由来する。船が停泊するときに、碇が下ろされて海の底にずしりと響き、碇と鎖の重さで巨大な船を停止させるパワーが発揮される。  これと同じように、相手の心にずしりと響き、相手の心を揺り動かすパワーを持つフレーズが、アンカリングフレーズだ。20年来の演習経験をふまえると、アンカリング力はネガティブなフレーズよりもポジティブなフレーズに多く含まれる。  さらに、実際にあったかなかったかはっきりしない話よりも、実際にあった話に多く含まれる。なかでも、昔の話より、最近の話のほうにアンカリング力がある。  そして、伝え聞いた話よりも、実際に体験した話の方がアンカリングのパワーが強いことがわかっている。つまり、ポジティブな最近の実体験に、アンカリングが含まれているのだ。

共感度と誘導幅のバランスで相手を誘導

 具体的には、相手の見解を聞いてから、「なるほど、そう考えているのですね(同意)。私も先月、このような経験をしました(経験)」とリアクションして、同意+経験のフレーズの組み立てにより、相手の見解に関連した経験を話す。  この同意+経験のリアクション話法は、取り上げる経験談によって、相手の共感度誘導幅が異なることに着目すると、リアクション効果を極大化できる。  自分の経験が相手の見解に近接した経験であれば相手の共感を得やすく、共感度は高いことになる。しかし、相手の見解とまったく同じ経験を話すと、共感度は高いが、まったく同じ話なので誘導幅は小さい。  相手の見解とかけ離れていたり、まったく逆の経験を話したのであれば、誘導しようとする幅は大きいが、共感度が低くなるので、実際には誘導できない。  そこで、相手の共感を得られる範囲で、相手の見解とは少しだけずらした経験の話をすれば、そのずらした方向に相手を誘導しやくなる。共感度と誘導幅のバランスが重要だ。
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いつの間にかオプションを付けてしまう心理
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