たとえば、相手が自動車を購入しようとして、「オプションは最低限のものでよい」という見解を持っていたとする。それに対して、「いや、せっかくですから、オプションA、B、C、D、E、Fのすべてを付けたほうがいいですよ」というように、相手の見解を否定して持論を唱えてしまうと、オプションを
「付けない」「付ける」の言い争いになってしまう。
これは誘導しようとする幅が大きすぎてと、共感度が低い例だ。売り込みたくて言ったのであれば自業自得だが、よかれと思ったり、親切心から言ったとしても、逆効果ということになってしまう。
その代わり、「そうですか。オプションは最低限のものでよいと考えているのですね(
同意)。私も半年前に車を変えたときに、同じように考えていたのですが、AとBとCは、とても役立っていますよ(
経験)」とリアクションすれば、相手は最低限のAだけのオプションを想定していたかもしれないが、AとBとCのオプションを検討してみようという気持ちに誘導しやすいのだ。
これは相手の見解に対して、誘導幅をA、B、Cの程度の幅に抑えて、自身の経験を加えて誘導する例だ。相手が共感できる範囲であれば誘導しやすいし、自身の経験談が誘導力を上げる。
さらに、もう少し大きな振れ幅で誘導できる話法に、相手の
関心領域のフレーズを組み込む方法がある。「そうですか。オプションは最低限のものでよいと考えているのですね(
同意)。私は安全性(関心領域)のかかわるオプションはフルでつけたのですが、とても安心で助かっています(
経験)」というようなリアクションになる。
この「安全性」というフレーズを、相手の関心領域により、「独自性」「汎用性」「調和性」などに変えていけばよい。「いや、せっかくですから、色々付けたほうがいいですよ」と返すよりも、各段に相手を引きつける効果があるのだ。
質問:「同意+経験」はどのように行えばよいか
相手の考え方に対して、「同意+経験」によって誘導する話法は、具体的にはどのように行えばよいのでしょうか?
回答:相手の考えに関連する自分の経験を話してみる
相手の考え方に対して同意したうえで、その考え方に関連する自分の経験を話す方法です。自分の実際の経験を話す分、相手を引きつける度合が高まります。そのため、相手の考え方との関連の度合が小さかったとしても、相手を誘導しやすい方法と言えます。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第160回】