「買うか借りるか」。物件を取り上げることを生業にする不動産執行人はその質問にどう答えるか?<競売事例から見える世界42>

賃貸を突然追い出されるのは死を意味する

 応答がないため室内に立ち入ると死んでいた、呼び鈴を鳴らすとガタンと物音がしたため慌てて室内に入ると首をくくっていた、突然部屋に立て籠もったかと思えば自害していた。  ケースは様々だが彼らの選択肢は「死」と直結しており、この比率は他業務に比べ「死」と近い位置にある不動産執行と比較しても圧倒的に多い。 ・引っ越しが趣味だから ・気楽だから ・近所付き合いが苦手だから ・持ち家はコストパフォマンスが悪いから  賃貸の理由は様々だが、何らかの理由で「家賃を捻出できない」「賃貸物件を追い出される」「賃貸物件が借りられない」という状況に陥る可能性から目を背けるべきではないだろう。 「災害も多いですし、フットワークの軽い賃貸のほうがいいですか? それとも無理して家を買ったほうがいいですか?」  冒頭の質問に対し双方オススメできないとしたのは、後者が“無理して家を買ったほうが”とあるからだ。背伸びせず手の届く範囲から小さな物件を探し出す方が賢明だろう。  昨今の不動産バブルもピークを過ぎ、これからは長期下降トレンドに入ることが目に見えている。現に首都圏でも少々利便性に乏しい地域から不動産の価値は下落の方向へと動きはじめている。 「下落しているなら買うべきではないのでは」との発想もわからないではないが、不動産価値がどこまで下がろうとも、自分で住み続ける分には有益のままだ。  不動産を購入する前には、最適な購入タイミングを見定めたい気持ち、最良の物件にめぐり逢いたい気持ちが必要以上に強い。

すべての面で満足できる不動産などは存在しない

 ところが流動的な市場に於いてどちらも満足できるポイントなど到来する可能性は極めて低く、タイミングを待ち続けても“買い時”は訪れないまま、ズルズルと賃料だけが垂れ流されていくことになる。  全ての部分で100%満足できる不動産はまずない。どこか1点でも誇れる部分があるならばそれで十分、そのタイミングで最良の選択であったと自信を持つべきだろう。 「住めば都」という素晴らしい言葉もある。この言葉は世界中に似たようなものがある以上、万国共通の教訓的価値観と言えるのではないだろうか。  今から四半世紀ほど前には「フリーターって新しい生き方だよね」という考え方が横行した。  現在ではそんな言葉に踊らされた氷河期フリーターたちが定職や貯蓄を持てず、社会システムを脅かす存在となりつつある。 「賃貸暮らしって新しい生き方だよね」  この言葉が後の世で同じような扱いとなっていなければよいのだが。 <文/ニポポ>
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