東京五輪施設建設の「目に見えない部分」に、21万畳分の熱帯材が使われている!?

森林認証なし、違法に「皆伐」された木材が有明アリーナや新国立競技場建設に使われた!?

 2018年5月、今度は有明アリーナでインドネシア・コリンド社のコンパネが見つかった。大会組織委員会が公開した情報によると、この木材は森林認証を取得せず、住友林業によって供給されていた。  コリンド社はインドネシアで木材、パーム油、紙パルプなどの事業を展開する韓国系複合企業だ。違法伐採に加え、樹木を全て伐採して生態系を破壊する「森林皆伐」、農園開発のための火入れ、人権侵害、脱税への関与が指摘され、東京五輪に供給された木材が違法かつ問題あるものだったリスクが高い。  RANはインドネシアの現地団体と共同で、コリンド社の木材供給網について調査を行った。その結果、世界で最も豊かな生物多様性を誇る熱帯林で同社が伐採を行ない、地域コミュニティの土地を違法に強奪していたことが明らかになった。  また、同社がボルネオ島のオランウータンの生息地から木材を調達していたことも突き止めた。インドネシア産コンパネが有明アリーナで約1万枚使われ、新国立競技場では12万枚近くも使われたことを考えると、コリンド社製の森林認証のないコンパネが新国立競技場の建設にも提供された可能性は高い。

2017年の1年間だけで日本の面積の4割に当たる熱帯林が消失

オランウータンの通報

RAN本部のあるサンフランシスコの日本国総領事館にも通報書類を提出した

「オランウータン」による通報は、昨年11月の通報から11か月が経過した。しかし、いまだに進展がない。そこでRANは今年7月、国際オリンピック委員会(IOC)に「東京五輪の通報制度が機能しているか調査してほしい」と手紙を送った。  世界では国連「ビジネスと人権に関する指導原則」がスタンダードとなっていて、東京五輪当局の対応には透明性や説明責任などが不足しているという点を指摘した。  熱帯林には陸上生物の半分が生息し、先住民族や地域住民は食料や水などをそこから得ている。熱帯林は地球の気候と降雨パターンを調節し、炭素を吸収・貯蔵することで気候変動の緩和にも重要な役割を果たしている。  しかし木材伐採や大規模農園開発のために更地にされ、熱帯林は急速に劣化・破壊されている。森林減少を監視する国際的なプラットフォーム「グローバルフォレストウォッチ」によると、2017年の1年間だけでも日本の面積の4割に相当する熱帯林が失われたという。  東京五輪関連の建設工事はほぼ終わっている。この五輪で定められた基準や体制は、今後の自治体や企業にとって「モデルケース」となることが期待されている。今は持続可能な社会を次世代に残すために、「ポスト東京2020」に向けて真のレガシーを作っていく過程にあることも忘れてはならない。 熱帯林<文/関本幸 写真/レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
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