元職員を直撃! 日本全体で毎月130億円を「売り上げ」る、技能実習「監理団体」の闇

「非正規ルート」で行われる小遣い稼ぎ

 現在、技能実習生は32万8360人。一人当たりの監理費が4万円だとすると、日本全体の監理費の総額は1か月で131億3440万円(1年で約1576億円)、監理団体は1か月で平均505万円(1年で約6060万円)の監理費をもらっている計算になる(監理費の総額を監理団体数2600で割った)。  しかしこれらは正規ルートのカネの流れだ。営利活動が禁止されている監理団体は抜け道も作っているはずだ。 ――非正規ルートのカネの流れはどうなっているのか? 「それもある。海外出張の際、実際は送り出し機関に払わせた経費を領収書で落とすとか、監理費名目で送り出し機関にカネを渡して後からもらうとか、そういう小遣い稼ぎはどこでもやっているだろう」  それ以外にも、監理団体が送り出し機関からキックバック(謝礼)をもらっていたり、実習生が失踪した場合に賠償金(保証金)をもらう裏契約を交わしていたことが報道されている(『朝日新聞』8月19日、10月8日など)。  技能実習制度には、監理団体という「仲介業者」が組み込まれている。そこから構造的な搾取が生まれているのだ。

業界用語「エア監査」とは何か

――次は監理事業について聞きたい。結局、監理事業は儲かるのか? 「それがそうでもない。事務所の家賃・通信費・人件費などの固定費に加えて、海外出張費・実習先への巡回訪問費・書類申請費など、とにかく経費がかかる。特に最近は行政の締め付けが厳しくなり、どこも厳しい」 「役員は知らないが、少なくとも職員は大変だ。年収は先ほど言った通り、それほど高いわけではない。それに対して仕事量は膨大だ。何より書類関係の業務がバカにならない。ビザの申請・更新、入管や外国人技能実習機構(OTIT)への書類提出、企業から毎月上がってくる賃金台帳の審査など、とにかく書類の処理に追われている。実習生一人当たり数十センチの書類を作らなければならない。うちの場合は職員100人のうち、30~40人程度は書類関連業務で、5000万円のデータ管理ソフトを導入しなければ間に合わなかったほどだ」 ――実習生のトラブルが後を絶たないが、監理団体の実習生に対するサポートはどうなっているのか? 「まず確認しておきたいのは、実習生は監理団体に所属しているわけではないということだ。送り出し機関や受け入れ企業は実習生と契約を結んでいるが、監理団体は彼らと契約しているわけではない。監理団体は送り出し機関と受け入れ企業と契約して、実習生に対するサービスを提供しているだけだ」 ――しかし監理団体は国から許可を受けた団体でもあり、技能実習制度の監理事業に責任を負っているはずだ。 「そこがややこしいところだ。たとえば1年目の実習生に対しては1か月に1回の訪問、2年目以降の実習生に対しては3か月に1回の監査が義務づけられている。しかし、小さい団体では人手が足りず、実際に訪問しないで書類だけで済ませる場合が多い。監理団体の中では『エア訪問』『エア監査』という言葉が使われている。賃金台帳の審査でも過払い・不払いなどのミスが目立つが、ちゃんとチェックしておらず、ミスに気づいていないところも少なくないだろう」
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実習生を苦しめる「監理団体」の密室性
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月刊日本2019年11月号

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特集2【消費増税のカラクリあなたの所得が大企業に奪われる】
特集3【アメリカの代弁者・小泉進次郎】
特別対談【危機に直面する保守政治】
自民党衆議院議員・石破茂
東京工業大学教授・中島岳志