モラハラは脳内麻薬を伴う依存症。治療は至難の業<モラ夫バスターな日々32>

モラハラは治療できるのか?

 私の理解では、モラ夫の治療には、最低限、2つのことが必要である。  第1は、幼少期の社会化の際に取り込んだモラ文化を書き換えることである。人格の基礎部分に内在化されているため、数年間を要する作業になるだろう。  第2は、依存症治療である。モラ夫自身が、依存の仕組みを学び、自己の認知の歪みを正し、さらに、モラを繰り出そうとする自分自身をコントロールするための対処方法(コーピング)を編み出し、実践する必要がある。依存症治療も、数か月では終わらない。  そして、以上の治療を行っても、モラが治るどうかは、何ともいえない。

モラ夫の言う「反省」は見せかけに過ぎない

 冒頭の相談者の夫は、妻をディスり、怒鳴り散らし、説教してきたという。間違いなく、モラに依存している。  モラを行うためには、その対象、すなわち、被害妻の存在が欠かせない。モラ夫が反省し、土下座し、誓う姿勢は、おそらく真摯にみえる。実際、表層的には、本人も真摯な思いに満ちているだろう。しかし、その反省の姿勢も、依存症の一部である。モラ夫は、妻を取り戻すために「反省」を演じているに過ぎない。妻がモラ夫の元に戻れば、遅かれ早かれ、モラが復活する。  したがって、相談者に対しては、「モラ夫は、反省しても、土下座しても、治らない。信用し期待して戻ると、遅かれ早かれモラが再発する」と回答することになる。  居酒屋等で、若い男が、恋人らしき若い女に対し、俺様論を展開し、説教する場面に遭遇することがある。結婚前からモラ依存症なのである。結婚したら、確実にモラスイッチが入り、妻は、彼のモラを一身に受けることになる。敢えて言えば、結婚前のデートでモラが出たことは、幸運である。モラ男とわかり、結婚せずに逃げるチャンスを得たからである。  モラは治らない。モラ夫/男からは、逃げるしかない。 <文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
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