――でもその段階ではまだブレイクはしてなかった?
政所:そう、現場では盛り上がるし「ヤバい」って声は聞くけど、目に見えてSNS上で盛り上がってるとかはなかったんですよ。で、贅沢ホリデイズでアルバムを出すってことになって、「節子」も収録したんですね。で、そのときにiTunesなどのネットでの音楽販売・配信を仲介してくれる会社というのがあるんですが、そこの人が「いま、ちょうどTikTokのキャンペーンみたいなのをやっている」って言われて。別にそこに出してもお金にはならないけど、プロモーションにはなるっていうことで出してみたんですね。
で、Tik Tokは15秒なんで、イントロの語りだけで終わっちゃって、僕が面白いと思ってる「ツッコツッコツッコ」のループする部分が入らないんで、そこをちゃんと入れるように編集して、しかもBPMをさらに速くして凝縮して出したんですよ。
要は「節子」の演歌+テクノのテクノの部分だけなんですよ、載ったのは。で、そのアップしたらオススメに載ったのかな? そしたらまず
インド人が食いついてくれたんですよ。
TAM:インドの人は反応するのが早かったんですよ。オススメに乗る前に一番最初のがアップされて、ちらほら出始めたんだけど、そのときは全部インド人や外国人だったんです。
政所:インドですげえ超イケメンみたいなやつが『節子』に乗せてひたすらかっこつけているみたいな動画がアップされて……。意味わかんねえなってゲラゲラ笑っていたら、あれよあれよという間に拡大してって。
――インドの人が見ても、日本語で「お前節子じゃねえかー」以降はずっと「ツコツコツコ」なわけで、当然意味はわかってないんでしょうね。
政所:だと思います。
――政所さんはFUNKOT(インドネシアのダンスミュージックで、高野氏はそれを日本に紹介し、現地の有名DJにも認められ、インドネシアのクラブでもプレイしたことがある)ならばインドネシア人が反応する可能性はありますが、インドなんですね。
政所:そうなんですよ。 はっきり言ってしまえば、
なぜインドの人が食いついたのか全然わからなくて(笑)
TAM:インドの人の動画はだいたいダンスより、ツコツコツコの部分でひたすらカッコつける動画が多かったですね。
チョップ:インド語でツコってなんか意味があるのかもしれない(笑)
政所:インド語はないけど、ヒンディー語か英語で、あるのかもしれませんね……。
政所:それでインド人と何人かの日本人が使ってくれたときに、Tik Tok本社に僕が呼ばれたんです。「ちょっとあの曲面白いからお話を」的に。で、「
この曲は面白いから会社で推していきたい」という話になったんですね。
で、そのときに「
Tik Tokで流行る曲のセオリー」っていうのも教えてもらったんです。それは、
・BPMが128~135で速め
・繰り返しがある
・ドロップ(一つ決めポーズを取れるような抜けるところ)がある
・女性ボーカル
なんだそうです。
でも、「節子」は極端に速いし(約190BPM)ダミ声の男だし、セオリーから外れてるとこが多いんで、Tik Tokの人もなぜバズってるのかわからないらしいんです。なぜ流行っているかはわからないけど、とにかく流行ってるし、Tik Tok社員の中でも面白がってるっていうので、プッシュしていきたいと言われてからまた跳ねたんですね。
チョップ:だからインドから来たんだよね。逆輸入。左ハンドルのホンダみたいな(笑)。
――今までの高野さんの音楽のキャリアをたどると、電気グルーヴさんに影響を受けて音楽を始め、日本のナードコアに始まって中国の春節歌謡からFUNKOTに行って、そしてインドでバズると、どんどん西へ西へ向かってますね。
政所:そう、すでに
天竺(インド)には辿り着いたっていう(笑)。
TAM:あたしが思ったのは、Tik TokはBGMに併せて動画のカテゴリが決まってくるんですね。例えば、誰かが振り付けつけた曲の動画がバズったら、その曲ではみんなその振り付けになるとか、おもしろ動画だとこの曲とか。曲に対してやることが決まる事が多いんだけど、
「節子」は全ジャンルあるんですよ。振り付けもかわいい動画もハプニング動画もなんでもある。そこもセオリーから外れているんですよね。
チョップ:ルールがないんだよね。
TAM:何にでも合っちゃうんですね。
政所:昔は、ナードコアの曲作ってもアナログ(レコード)を切って出して、クラブで掛かって噂になって……というのが、僕らみたいなスタイルの音楽やってる人の「ヒット」の流れだったんです。今はその「ヒット」の流れが変わりましたね。
YouTubeでも全然跳ねなかったのに、まさかTik Tokに拾われるとは……。
チョップ:どんなジャンルでもDJがかけて踊るとか、ライブ行くか、部屋で聴くかしかなかったけど、Tik Tokという
全然違う音楽の楽しみ方、全然違う場で評価されてヒットが生まれるっていうのは、新しい時代なんだなって思いますね。
【贅沢ホリデイズ】
百戦錬磨のダンスホールレゲエおじさん CHOP STICK(右)、元祖FUNKOTおじさん DJ 高野政所(左)の「LET’S GO! シャンパンマン」コンビがアジアの神々と精霊から啓示を受けて結成した無責任宴会ダンスミュージックユニット。「俺達みたいになるな!・・・だけど、俺達みたいになっても何とかなる!いや、何とかしてみせる!」というメッセージを笑いと涙とともに日本と世界各地に届けるために2016年より本格活動開始。現在は、エアギター日本一の称号を持つレゲエダンサー TAMが加入し3人組に。
<取材・文/HBO編集部>