「朝鮮幼稚園の無償化対象外」を、外交カードとして使うことは正しいのか?

「朝鮮学校外し」の背景

 ここからが本論だ。  話の焦点を、朝鮮幼稚園やそれに連なる朝鮮学校に絞ってみる。日本政府による「朝鮮学校外し」は、今回の幼保施設無償化対象外の問題だけではない。2010年から始まった高校無償化制度においても、全国に9校しかない朝鮮高校は対象外とされている。ちなみに朝鮮高校無償化問題に関しては、今年8月、東京朝鮮高校卒業生らの上告を最高裁判決が退けている。  この内容について、「産経新聞」の記事から抜粋したい。  平成29年9月の1審東京地裁判決は、文科相が無償化の適用対象に指定するかどうかの判断にあたり、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が朝鮮学校と密接な関係にあり、教育内容に影響を及ぼしているとする公安調査庁長官の国会答弁などを考慮したことは「不合理とは言えない」と指摘。「就学支援金が授業料に確実に充てられるという十分な確証が得られない」として不指定とした判断に「裁量権の逸脱、乱用があったとは認められない」とした。(産経新聞2019年8月28日  要は、国連のこどもの権利委員会が「不当な差別」と勧告していても、朝鮮学校と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係性、また記事には言及されていないが、朝鮮総連と北朝鮮との関係性を「考慮」しているという事だ。そしてこの一連の事態を、安倍首相と日本政府は、北朝鮮との外交カードに利用しようとしているのではないかと筆者は憂慮している。

金委員長に歩み寄りの意向を示した安倍首相はこれをどう扱うか

 現状、朝鮮半島を巡る東アジア情勢は新たな転機を迎えている。  そのきっかけとなったのは、北朝鮮強硬派で知られるアメリカのジョン・ボルトン大統領補佐官の更迭だ。ボルトン氏は核の完全放棄を前提とした「リビア方式」を北朝鮮にも採用するよう強く進言していたが、トランプ大統領がこれに強く反発し、補佐官であったボルトン氏を解任した。  この解任劇を機に、北朝鮮とアメリカの距離が一気に縮まり、トランプ大統領は年末の米朝首脳会談を示唆するまでに事態は変化している。  一方、9月24日にニューヨークで開催された国連総会における一般討論演説で安倍首相は、「条件を付けずに、金正恩委員長と直接向き合い決意」であるとし、「国交正常化を実現することが目標」と、対北朝鮮関係において積極的な姿勢を変えていない。  このような外交戦の中で、日本が朝鮮高校や朝鮮幼稚園への無償化適用を外交カードとして利用するために、あえてそのような状況を作っているというのは単なる杞憂か?  北朝鮮との国交正常化を目指した、元自民党副総裁であった金丸信(故人)の次男である金丸信吾氏を団長とする「日朝友好山梨県代表団」が9月18日に訪朝したのも、政府は表向きには訪朝を止めていたが、日朝関係のチャンネルを作るうえで偶然なことではないはずだ。  核問題や拉致問題、戦争責任の問題等、解決すべき問題が山積している日本と北朝鮮の外交交渉において、互いの手札がどれだけあるのかは大事なポイント。それは即ち、互いの妥協点を探る中での譲歩案件となるからだ。これは、筆者のまったくの推測や戯言ではない。  朝鮮高校の無償化除外について、「(日本政府が)この措置を撤回しない限り、両国の関係は1ミリたりとも前進しない」とは、北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が、先月、金丸氏に語った言葉。すでにこの問題は外交レベルの案件に引き上げられているのだ。  万が一にも、安倍首相や日本政府が、朝鮮学校における子どもの教育問題を少しでも政治利用しようと考えているのであれば、それは北朝鮮や朝鮮総連との関係性(≒教育への政治介入)を持ちだし無償化適用外としてきた日本政府や文科省の考え方と大きく矛盾する。  とにかく、子ども達には学ぶ権利があるし、大人たちの勝手な都合で、教育機会に不平等があってはいけないと心から思う。 <文/安達夕>
Twitter:@yuu_adachi
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