「移住すればうまくいく」わけはない。理想通りにはいかない移住のリアル

移住先の「土地柄」に惚れ込むことの大切さ

 もともとアパレルジーンズメーカーで勤務していた荻原氏。一念発起して西条へ移住し、蕎麦屋を15年経営している身として、西条市の魅力をこう語る。 「西条市は今も、古き良き日本が色濃く残る街。四国は30年前に橋がかかった土地で、出る人はいても入ってくる人は少ない。そのため、西条人は度量の深さがあり損得勘定よりも、正しいかどうかで判断する考えの人が多い」  西条に残る古き良き日本の考え方に触れ、作られた良さではなく、存在している良さに気づいたのだという。  眞鍋氏は西条に住む住人の性格や気質について次のように語った。 「西条人は自分から構いにいく気質ではない。特に西条の男性はシャイで内気な人柄が特徴で、一歩引いた感じで接するイメージがある。だが、最近は外部からのよそ者に慣れてきたと感じていて、外から来た人に対しても受け入れる気質になってきている」

移住は目的ではなく手段

 荻原氏は、夢を抱いて大阪から来たときの苦労話を振り返った。 「西条市には手打ち蕎麦屋がなかったので、手打ちだから人気が出るだろうと思い込んでいた。しかし、西条の人が何を欲しているのかが掴めず、全然売上が立たなかった。大阪からやって来たというプライドを捨てきれず、独りよがりになっていたことに気づいた」  自分が移住先で一旗揚げてやるという気概や意気込みを持つことは大切だが、それが独りよがりの考えになっては移住先で受け入れてもらえない。  利他的な考えを持って地域の住人と接し、街に対する考えや風土を理解していくこと。移住先の一員として、地域にどう貢献していくかという考えを持つことが移住者には求められるだろう。 「外部から来た人が、大阪弁で西条の人と話すのはナンセンスだと思った。地域の風土や歴史を知る努力はもちろん、日常会話にも気を配り、少しずつ西条のことを理解するよう心がけた。自分のやりたいことを街に寄り添って掘り下げること。相手ありきの目線になって考えたとき、徐々に軌道に乗ってきた」(荻原氏)
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まず考えるべきは「なぜ移住したいか」
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