京大「自由の学風」はどこへ……「オルガ先生像」設置で処分されそうな学生を直撃

「自由の学風」? 京都大学で学生への処分相次ぐ

Nさんが2019年2月の入試当日に京大に設置した「オルガ像」

Nさんが2019年2月の入試当日に京大に設置した「オルガ像」

 京都大学といえば、今でも自治寮や学生運動などといった大学での学生文化が根強く残る「自由の学風」で知られている。しかし吉田寮の廃寮問題や今年の9月12日に公表された三学生に対する無期停学処分などに象徴されるように、学生の自由が大学側から認められなくなりつつあるのが現状だ。  同じく9月12日、理学部4年生のNさんも処分を検討されていることが判明した。今年2月の京大入試で、20年近く続く伝統となっている「折田先生像」に対抗して「オルガ先生像」を制作・展示したことが問題視されたのだ。筆者は、渦中のNさんを直撃した。

折田先生像はいいのに「オルガ先生像」はダメ?:Nさんの訴え

今回、処分が検討されているNさん

Nさん

――今年2月の入試でNさんが設置した「オルガ像」とはどういうものですか。 Nさん:2015年から2017年にかけて放送されたガンダムシリーズの『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』というアニメ作品があります。この作品に登場する主人公サイドの組織・鉄華団の団長であるオルガ・イツカというキャラクターはネットで大人気で、僕自身も好きでした。オルガ団長が散り際に放った「止まるんじゃねぇぞ……」という台詞はどこかで聞いたことがある人も多いと思います。 ――なぜそのキャラクターの像を京大の入試の日に建てようと考えたのですか。 Nさん:京大にはここ二十年くらい、入試の日に「折田先生像」(京大の前身となった旧制第三高等学校の初代校長・折田彦市のこと)を学生が制作して建てるという文化があります。ただ「折田先生像」というのは名ばかりで、芸人のコウメ太夫や『どうぶつの森』のリセットさんなどが毎年折田先生像と題されて建てられています。  これは大学当局も黙認していて、10年ほど前には京大の公式ホームページに「平成20年度版 折田先生像について」というページが作られ、てんどんまんやポコちゃんの「折田先生像」が取り上げられ、「出来映えが素晴らしい」などと肯定的な評価を与えられていました。  僕はこうした京大の「おもろい」伝統が好きだったので、今年は「折田先生像」に対抗して、「オルガ先生像」を作ろうと思ったんです。 ――どれくらい反響がありましたか。 Nさん:設置した日から話題になり、ねとらぼハフポストなどのメディアに取り上げてもらいました。Twitterで上げられていた写真は数万リツイートされ、『鉄血のオルフェンズ』の絵コンテや作画監督を担当された大張正己さんにも言及してもらいました。 ――「オルガ先生像」を建てる前にも創作活動はしていたのですか。 Nさん:京大にこうした文化があることは大学入試の当日まで知らず、折田先生像をはじめとする京大の自由な学生文化を見て感銘を受けました。2015年度に京大に入学し、表立った創作活動をやり始めたのは2016年でした。  僕がやってきた中で最初に話題になったのは「ごちうさ総選挙」でしたね。2017年の衆院選で選挙ポスター掲示板が設置されたその横に、人気アニメ『ご注文はうさぎですか?』のキャラクターのイラストを選挙ポスター風に加工して張り出したんです。Twitterでも写真が拡散され、メディアにも取り上げてもらいました。
ごちうさ総選挙

右が「ごちうさ総選挙」の選挙ポスター掲示板。左は第48回衆院選用のもの。

――京大にはそうした文化があったにも関わらず、今回「オルガ像」の件で処分を検討されているんですね。像を設置した入試当日、職員とはどのようなやり取りがあったのですか。 Nさん:受験生がキャンパスに入ってくる時間帯に像を持ち込み、正門の脇のところに置いていたのですが、職員が来て撤去すると告げられました。正門は京大のプレートも貼ってあるし、だからダメなのかなと思い、別の門のところに持って行きました。ここでは通行の邪魔にならない隅のところに置きました。  それでも職員が来て、早くどかせ、構内に持ち込むのはダメなんだと言われました。でも周りには受験生がたくさんいてそのままでは片づけられない、今すぐ持って帰るのは無理だと伝えました。職員からはとりあえず外に出せと言われて構外に出しました。職員と数分間言い合いになることがあったのは事実ですが、このように最後は向こうの指示に従いました。
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毎年恒例だったのに、処分されそうなNさん
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