騙して呼び出し監禁、パスコード奪取……。狙われるのは「ネットの中」だけではない。

2018年にも似た事件 ホテルに監禁 仮想通貨強奪未遂

 こうした事件は過去にもある。2017年の11月には、ホテルの一室で仮想通貨ビットコイン約1億円相当を奪おうとした強盗未遂事件があった。  この事件では、東京都港区赤坂のホテルに、会社社長の男性を引きずり込み、ナイフを突き付けて「早くコインを送れ」と脅迫した。男性は自力で逃げ出して110番通報したことで事なきを得た。  どうして、そんな危険な場所に足を踏み入れてしまったのか?  男性は、仮想通貨の交換を仲介する仕事をしていた。そしてビットコインを現金1億円と交換する取り引きに行ったのだ。犯人たちは、偽物の100万円の札束を用意して、その写真を送ることで男性を信用させた。

クラッキングはネット上だけでない リアルにも警戒が必要

 2つの事件は、いずれも大金の取り引きに釣られてリアルで犯罪者に会ってしまったケースだ。「自分にはそういう機会がないから安心だ」という人もいるかもしれない。しかし、ネットで接触してリアルで被害を受けるケースは、身近にも起こりうるものだ。  古典的な美人局のネット版というものもある。マッチングアプリで知り合った相手とバーに行くと、ぼったくりバーだったというケースも、つい最近Twitterで話題になった。この場合は金銭欲ではなく、性欲でセキュリティが突破されたものだ。  こうしたパターンではなくても、ネットコミュニティのオフ会に行ったら、ネットワークビジネスや新興宗教の勧誘だったというケースもあるだろう。リアルで他人に会う場合は、そうした事態が起こりうる。そう思い、警戒しておいた方がよい。  また、一人で誰かに会う場合は、行く先や時間、会う相手などを、他人と共有しておくべきだ。何か事件に巻き込まれた際に、足跡が辿れなくなる。  誰にも情報を伝えずにネット経由の事件に巻き込まれると、最悪の場合、失踪者になる可能性がある。世の中、何が起きるか分からない。警戒するに越したことはない。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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