北村地方創生相が「犠牲に」と切り捨てた石木ダム水没地区住民、涙の訴えも長崎県知事には届かず

北村地方創生大臣が「誰かが犠牲になるべき」と発言

県知事に訴える住民たち

9月19日、長崎県庁で石木ダム建設予定地の地権者が中村法道知事と面会、建設見直しを訴えた

 内閣支持率がアップした第4次安倍改造内閣で、10月4日スタートの臨時国会で加計疑惑にまみれた萩生田光一文科大臣とともに野党の追及を受けそうなのが北村誠吾地方創生担当大臣(長崎4区)だ。  新内閣発足直後の9月14日の記者会見で、自らの選挙区内の「石木ダム」(長崎県佐世保市川棚町)について「みんなが困らないように生活するためには、誰かが犠牲(になり)、協力して役に立つという精神で世の中は成り立っている」と発言。反対を続けて立ち退きに応じない地権者が「犠牲になるべき」というダム建設推進論をぶち上げたのだ。  これを「ダム建設『誰かが犠牲に』 北村地方創生相」(14日の『日本経済新聞』)「北村地方創生相 ダム建設『誰かが犠牲に、という積極的なボランティア精神で』」(14日の『毎日新聞』)など大手新聞が一斉に報道すると、地権者は「住民の理解を得たいと言いながら、強制的に土地を奪おうとしている。これは人道上の問題だ」(炭谷潤一さん)などと反発。  知事時代に県内のダム見直しをした前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員も「北村誠吾新『地方創生大臣』は『地方破壊大臣』か?」(9月16日のフェイスブック)と批判、翌17日の「公共事業チェック議員の会」総会でも、ヒアリングを受けていた国交省や厚労省の官僚に「これだけ財政難で少子化の時代に国はどういう国政をしたいのか。未来の子供たちに説明できるのか。公僕としての誠意を示していただきたい」と強調、国費147億円を投入する「石木ダム建設計画」(総事業費538億円)の検証と見直しを求めた。

河川工学の専門家は「ダム案より代替案のほうが安い」と指摘

 石木ダムは利水と治水が目的の多目的ダムだが、かつては渇水に悩まされた佐世保市の水需要は右肩下がりとなっている。治水も堤防強化などで代替可能であることから、地権者に犠牲を強いるほどの必要性に欠けると疑問視されている。  全国各地のダム計画を検証してきた今本博健京大名誉教授(河川工学・防災工学)もこの総会に参加、「石木ダムは要らない」と銘打ったレジメをもとに解説。総会の最後に今本名誉教授はこう指摘した。 「石木ダムは必要性に疑問がある。ダム案と代替案を比較する時にずさんな検討をしている。代替案の中に必要のない事業が含まれていて水増しされており、精査すればダム案より安くなって逆転するだろう」  きちんとした見直しをすれば、石木ダム建設の正当性(公共性)は消え去る可能性が高いというのだ。
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「犠牲」にされる地域住民、涙の訴え
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