昨年の記事にも書きましたように、昨年8/30公聴会の7日前の2018/08/23に河北新報*によって、更に2018/08/27にフリーランスライターの木野龍逸氏**によって、「トリチウム水」海洋放出の大前提である「トリチウム水」中の放射性核種は、それまで説明されてきたように事実上存在しないのでは無く、ヨウ素129など
複数の核種で基準=告示濃度を超えているという事実がスクープされました。
<*処理水の放射性物質残留 ヨウ素129基準超え60回 17年度 河北新報 2018年08月23日木曜日 (リンク切れ)>
<**
トリチウム水と政府は呼ぶけど実際には他の放射性物質が1年で65回も基準超過(木野龍逸) – Y!ニュース 2018年08月27日月曜日>
この事実は、「トリチウム水」海洋放出処分の大前提が虚偽であったと言うことで、要は、
トリチウムだけが含まれる(告示濃度を超える放射性他核種は含まれない)という説明は真っ赤な嘘であったことを意味します。
このスクープにより、国と東電が合意形成の儀式と目論んだ2018/08/30、31の公聴会は大荒れに荒れ、完全に失敗しました。
現在、
東京電力の処理水ポータルサイトでは、「トリチウム水」という言葉は姿を消し、
「処理水」として説明されています。そしてすでにスクープから一年以上していますが、素人にはきわめて見つけ難く、読み取りにくく、理解しがたい形で開示されている資料を読みますと、
事態は全く改善しておらず、むしろ河北新報と木野氏がスクープした内容より遙かに深刻であることが分かります。
東京電力が処理水ポータルで公開している資料を見ますと、いわゆる「トリチウム水」と呼称して良いものは約100万トンあまりのタンク内
「処理水」のうち僅か23%足らずしかありません。残りは、
「ALPS不完全処理水」と呼称すべきものです。
これは例えば
下水処理場から海洋や河川に放出する「下水処理水」がうんこやトイレットペーパーの混じった「不完全処理水」である事故や欠陥と本質的に変わりません。お台場のオリンピック競技会場予定の海がウンコやトイレットペーパーが浮かぶ海であることが露見して、テスト大会が中止になったこと*と通じます。
<*
オープンウオーター水質「臭い。トイレのよう」の声2019/08/11日刊スポーツ、
お台場の水「臭い」騒動 大会中にしのぐだけでいいのか2019/09/06朝日新聞>
更に、昨年2018年10月1日の「
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」においては,
全β値と主要7核 種の合計値の乖離(足し算しても実測値に全然足りない)ことが委員から指摘された件について、今年2019/08/09にやっと回答がなされ、主要7核種外である
99TC(テクネチウム99)と14C(炭素14)が主たる核種であることが東京電力より報告されました。
炭素14に至っては、これまでノーマークであり、ALPSでの除去が期待できない核種です。
国際基準で言われる「トリチウム処分」と同列に語れないシロモノ
要するに、今年8月9日の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の場ですら、告示濃度を超える新たな放射性核種の存在などこれまでの説明に無かったことが明らかとなり、この
「処理水」なるものは、通常行われているトリチウムの処分と同列に語ってはならないのです。まさに「ALPS不完全処理水」です。
福島第一原子力発電所のタンクに含まれる「トリチウム水」=「ALPS処理水」=「処理水」については、その
77%がトリチウム以外の放射性核種を告示濃度以上に含んでおり、更に炭素14の寄与を加えて再評価すると、その割合は更に増加する可能性が高いのです。著者は、100万トン余りのうち少なくとも8割程度は、「ALPS不完全処理水」であろうと予想しています。
今まで「トリチウムしか含まない水」または「トリチウム以外は告示濃度以下である水」として、「処理水」の海洋放出に同意を得ようとしてきた議論は、その
大前提が完全に崩れ去っているのです。
このことが明らかとなった2018/08/23以降、とくに実態がある程度明かされた2019/08/09以降に「トリチウムしか含まない水」または「トリチウム以外は告示濃度以下である水」として海洋放出への合意を求める主張は、
無知が故の根本的に誤った主張であるか、嘘と断定して良いです。
主張の実態を見る限り、その多くは真っ赤な嘘であり、きわめて悪質です。人類に対する犯罪といっても良いでしょう。